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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第10輪 サンタの三太

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

私が子供だったら、アンタにだけはプレゼントの配達はやめてほしい。

だって、ミスしそうだもん 

             ――ラベンダー

 

 海を背景に仕事する男性

 

「助けてくれラベンダー、サンタ界が大変なんだ!」

 

「へ? なんだって?」

 

突然現れたスーツ姿の男は、どうやらだいぶ混乱しているようだ。

言い終わってからオレがラベンダーでないことに気づいた。

 

「だ、誰、ですか?」

「いや、おまえこそ誰だよ。ここはラベンダーの部屋だぞ」

「それは失礼しました。私はサンタの三太と申します」

 

なに……こいつ、サンタだったのか。

スーツを着た黒髪のアジア系男性は、サンタというよりも

発展途上国のそこそこやり手のビジネスマンといったほうがしっくりくる。

暮らしに苦労していて、仕事の現場も工夫に工夫を重ねて

やっと回っているところで働いていそうだ。

 

それにしてもサンタの三太って名前!

バウムクーヘン州知事とかプレジデント〈ドコドコ〉ぐらい

インパクトがあるぞ。

 

三太はなぜかオレのことを注意深く見ていた。

 

「ああ、オレはオレンジ、よろしく」

「え、オレンジの花だったのか」

 

オレはいまの言葉に花が高くなった。

 

(植物の精霊は花として扱われると気分をよくする。

マヌケそうなやつだと思っていたが、なかなかマナーを知っているらしい。

ちなみに植物の精霊を怒らせるのは簡単だ。

“ニンゲンみたい”なんて言えば簡単に怒る。

数える時も、ひとりふたりじゃなく1輪2輪と数えたほうがいい。

気にしないやつもいるが、それで激怒する花もかなりいる。

ひとりふたりという数え方をするのは精霊だけじゃなく人間もするからな。

人間とは区別したいんだってよ by オレンジ)

 

「いや、ちょっと待って」

「どうかしたのか?」

「きみは、どうしてラベンダーの部屋にいるの?」

 

さてと、ふむふむ……どうしてオレがラベンダーの部屋にいるかだと!

こいつ! 痛いとこをついてくるな。疑うようにオレを見ている。

 

どうやって言い訳しようか悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「ラベンダー? 帰ったの?」

 

マズい、マノンだ! このサンタが派手に転げまわったせいで、ラベンダーが

帰ってきたと思ったのか。

 

このままマノンに部屋に入られれば、それこそおしまいだ。

もう二度と週刊ドコドコを読めなくなるし、

最悪ラベンダーに変態扱いされる。

 

オレは片手を上げ、ドアに念力をかけて封じた。

「あれ? 開かない」

 

「あれは誰?」サンタが静かな声でたずねた。

「人間だ」

「なら、どうしてドアを封じる必要がある? 姿は見えないだろ」

「霊視ができるんだ」

「なんだって!」

「人間に姿を見られて大丈夫か? 

おまえの様子から察するに、緊急事態なんだろ?」

 

アジア系サンタは心底困り果てた顔になる。

四十代になったばかりのサラリーマンのようだ。

 

よし、もうひと押し! オレは若干迷いながらも、トドメの一撃をおみまいした。

 

「オレはアロマ連合のナイトだ。

ラベンダーは仕事で当分帰ってこない(と思う)が、

どうだ? オレで良かったら協力するぞ?」 

オレは手のひらから宙にアロマ連合のエンブレムである

フラワー・オブ・ライフを出現させた。

 

「……」

 

サンタは辛酸をなめるような、苦渋に満ちた表情で自分の足元を見ている。

しばらくして、オレの顔をじっくり見たあと、また自分の足元を見て、

オレの顔を見て、足元を見て、というのを何回も繰り返した。

 

そんな光景を見せられているオレの気持ちにもなってほしい。

神様、どうか、たのむ! こいつにイエスと言わせてくれ!

その代わりに、オレがラベンダーの部屋にいることをどうか黙らせてほしい。

 

とうとう顔を上げたサンタは、コクンと顔を縦に振った。

 

よっし!

 

「手伝ってもらう前に言っておくが、口外しないと誓えるか?」

「ああ、もちろんだとも。誓うとも。

なんなら礼名詠唱で契約を結ぼうか?」

 

「……ああ、たのむ」

 

オレは急に怖くなった。

礼名詠唱で契約を結ぶというのに、いまだにオレのことを疑い深くジロジロ見てくる

こいつもそうだが、なにやら本当にヤバい雰囲気がある。

オレの頭の中のセンサーが警報を鳴らし始めた。

関わるのは危険だ。そう言っている。

いい……のか? 引き返すなら、いまだ…… 

 

「どうした? 契約、しないのか?」

サンタ野郎は差し出した手をぶらぶらさせながら、顔を傾げてニヤけている。

 

!? こいつ、明らかにオレのことを試してやがる! ナメやがって。 

オレは速攻でクソサンタと握手した。

 

 「『天界の果実』の名において誓う――オレさまオレンジは、

いまからこのサンタから聞く緊急事態の内容について、

方法の如何を問わずいっさい口外しない」

 

握手した手の周りがパァっと輝くと、光の鎖がおたがいの手から出てきて

相手の手に絡みつくと消えた。

 

契約は済んだと言わんばかりにサンタが手を引き抜こうとするので、

オレは堅く手をにぎる。飛びっきりの笑顔でほほえんでやった。

今度はこっちの番だぜ!

 

「なにやってるんだ? 早く手を離してくれ」

「今度はおまえが誓う番だ」

「なぜ俺が誓わなければいけない? 手を離せって」

「まあ聞けよ。オレはいまからお前が話す内容については確かに

口外しないと誓ったが、手伝うかどうかは別だ」

 

サンタの表情が強張る。眉根をよせて強くにらんでくる。

「……脅しか? 何が目的かは知らないが、それならもうおまえには頼まない。

ラベンダーが来るまでここで待つ」

 

「急いでいるんじゃないのか?」

「おまえは信用できない。しばらくここで待っても来ないなら、

アロマ連合本部に行ってラベンダーを呼ぶ!」

 

ラベンダーがいつ帰ってくるのかは知らないが、もし

この部屋にオレがいたことがバレるととにかくマズい!

必死に頭をまわらせて、このサンタがされたくないことを

思いつく限りまくしたてた。

 

「オレの話を聞いてくれ。

オレはお前がここに来たことについては

好きに言いふらすことができる。

サンタの三太がラベンダーを慌てて頼ってきたこと。

サンタ界が大変だと助けを求めてきたこと。

それから、これからお前が話す内容について口外しない

ことを誓ったこと。

いま言ったことをアロマ連合の『真の薫香』に報告する」

 

「言えばいい。俺は困らない」

 

オレは手を離し早々に連合本部へ向かおうとした。

が、三歩と歩かないうちにサンタがオレの腕をつかむ。

 

「わかった! わかった!! 俺の負けだ!

本当に緊急事態なんだ、たのむ」

 

冷や汗がびっしり出てきた。内心ダメかとあきらめていたが、

最後まで行動してよかった。

 

「俺はなにを誓えばいい?」

「オレがラベンダーの部屋にいることを口外しないと誓ってくれ」

「おまえ、ストーカーか!?」

「断じてちがう」

「くそ! こんな状況じゃなかったらこんな契約なんかッ――」

「しないならしないで構わんぞ。『真の薫香』に報告するから」

「するよ『迷い仔――」

「絶対にオレがこの部屋にいることを誰にも教えないという

契約内容になるよう、結べよ? もし詠唱にあいまいな表現があってみろ!

連合本部にあることないことまで言うからな」

 

(契約というのは大切だ。自分ではちゃんと誓ったつもりでも、

もしあいまいな表現をしてしまえば好きに解釈されてしまう。

どういう言葉を使うかで、自分の立場を有利にも不利にもしてしまうから、

一番気をつけなければいけないことのひとつだ。

読者のみんなも精霊と契約する時は気をつけろよ。

ま、賢い諸君ならそんな愚行はしないと思うが)

 

「……ちょっと言葉を考えさせて」

しばしの間サンタは目をつむり、思考にふけった。

そして、呼吸を整える。

 

息の音が聞こえた。サンタがオレの手をつかむ。

 

「『迷い仔の目印』の名において誓う――サンタの三太は

植物の精霊オレンジが協力してサンタ界を救ってくれたあかつきに、

植物の精霊であるラベンダーの部屋に侵入していた事実を誰にも教えず、

死後の次元まで持って帰ることを誓う」

 

ふたたび光の鎖が現れて、オレとサンタの手を結んで消えた。

 

「ふむ、いいだろう」

目をつむって聞いていたが、まあ悪くない詠唱だ。最初のフレーズを除いて。

「この変態野郎」

「おい、言葉には気をつけろ。オレはまだおまえの話を聞いていないからな。

好きなように解釈して、サンタ界の危機的状況をねつ造して報告できるんだからな」

 

(契約内容の穴とはこういうことだ。こういう風にして契約相手を

追い詰めていくことができる。よし、学んだな?)

 

「そっちこそ、協力しないとどうなるか、わかってるんだろうな?」

 

サンタが言い終わるか終わらないかのうちに、恐ろしいことが起こった。

 

バッキ―――ンと、金属製のものが割れるような高い音が響き渡った。

念力を破る音だ。ラベンダーの部屋のドアが開かれた。

第9輪 プレジデント〈ドコドコ〉

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

我はお前たちが〈ドコドコさん〉と呼ぶ存在だ

 

                ――???

 

 優しく笑う大統領の写真

 

楕円形の執務室にはズッシリと積まれた本とパソコンが置かれた

横長のデスクがあり、ひとりの男が座っていた。

 

男は白いシャツにネクタイを締めていた。

しかし、洗いたての清々しいシャツとは反対に、男の顔は真っ黒だった。

唯一真っ黒ではない箇所といえば、目の色だけだ。

ぼんやりと黄色い光を放っている。

 

 男は口を開く。

 

「君には失望したよ、バウムクーヘン州知事」

「ま、待ってください、プレジデント〈ドコドコ〉!」

「私の部下に使えないものはいらないんだ」

 

そう言うとプレジデント〈ドコドコ〉は引き出しの中にあるスイッチを押した。

途端に床に穴が開く。

 

「ぅアっアアアァァァァァァァァァ!!?」

 

バウムクーヘン州知事は穴の中へ消えた。

「おまたせ子猫ちゃん。使えない部下を持つと苦労するよ」

プレジデント〈ドコドコ〉は自分のヒザの上に女を乗せて、胸を触りだした。

 

*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ

 

「アッハッハッハッハ! 怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

怖ええよ! なんだよバウムクーヘン州知事って!?」

 

 オレは今、週刊ドコドコを読んでいた。

このクソ漫画、毎週毎週1話限りの話を数ページ、作者である

ラベンダーが書いてくれるのだが今回の〈ドコドコさん〉はどうやら大統領らしい。

 

それにしてもなんだよバウムクーヘン州知事って! 

名前のネーミングからもうすでにツボだ。

人が死なない回はなく、たとえどんな状況であろうと最終的には

〈ドコドコさん〉が恐怖と理不尽、暴力の象徴として笑うクソ漫画。

 

仕事が忙しい時は2週間ほど休むのだが、

ほぼ週刊で書かれている素晴らしいクソ漫画。

 

(一応初めて読んだ読者のために説明しておく。

〈ドコドコさん〉というのは1番人気が高いOBAKEのことで、

台形や六角形など、いろいろなタイプがある。

ちなみにオレは〈トオルヨくん〉派 by オレンジ)

 

この週刊ドコドコ、面白いことは面白いのだが、ひとつ難点がある。

ラベンダーが個人的に書いているものだから、ラベンダーの部屋に

忍びこまないと読めないということ。

 

さてと、用は済んだ。とっととこの部屋からズラかろう。

オレは自分の香りを残さないよう意識して部屋から出ようとした。

そして出口へと視線を向ける途中、床から天井まである大きな絵画が目に入った。

 

黒いスーツの男性が雪道を走っている絵だ。

うーん、ラベンダーの私物にしてはイマイチなセンスだな。

 

(オレがそう思ったのは本当だ。ラベンダーはセンスだけはやたらいい。

正直、想い出の品でもなけりゃこんな意味のわからない絵は置いておく価値もない。

せっかくだからオレが新しい絵を書いてやろうと思ったが、部屋に入ったことが

バレるのでやめておく)

 

それにしても、この絵ってこんな絵だったっけ?

雪道を男が走っている絵ではなかったような……。

いや、興味はないのであまり見たことはないから、

やはりオレの気のせいかもしれない。

 

 そしてオレが去ろうとした瞬間、額縁の中の絵が動いた。

 

!?

 

なんだ?

雪道を走る男がどんどん動いてこっちへやって来ているように見える!

姿がさっきよりも大きくなっている。

オレは霊視してみた。すると、どうやらこれはポータルになっているようだ。

 

なるほど。これはラベンダーの仕事道具だったのか。

ラベンダーに用があるやつはこのポータルを通って会いにくるらしい。

道理で、ラベンダーにしてはセンスのない絵を飾っているなと思ったら。

それにしても絵のポータルとはオシャレだな。

 

(ポータルというのはそうだな……ドアだと思えばいい。

ある空間からある空間へ移動できるドア、それがポータル。

高質なものになればなるほど繋がる空間も増えるし、

より遠くへ行けたりもできる。精霊の世界にもUFOの発着場は一応あるが、

近い空間へ行くならポータルのほうが便利だ。部屋に設置できるし、

絵にしておけば限られた精霊だけで使えるしな)

 

こうしておけば、もしマノンやガトフォセが部屋に入ってきても

まちがって使うことはないだろう。 

ま、入ろうとしても人間には肉体があるから入れないが。

 

オレは感心した。

この絵のポータルはどういう作りになっているんだ?

おそらくアロマ連合から支給されたものだろうから、そこそこレベルの高い

ポータルにちがいない。

 

ポータルを使ってラベンダーの部屋へ来ようとしているやつを察知して、

絵として知らせてくれるのか。

どんな仕組みで察知しているのか、ちょっと気になるな。

たとえばだが、オレがどこかのポータルの前でラベンダーに会いに行こうと

強く念じれば、オレも絵になったりするのかな。

このポータルのアドレスを知っていればの話だが……

 

しかし絵の中のこいつは、どうして雪道を必死に走って

ラベンダーに会いに来ようとしているんだ? マヌケな絵面だ。

 

こいつはいったい何者なんだ?

 

オレは絵をにらんでいた。これがポータルであることをすっかり忘れて。

 

次の瞬間――

 

「うわッ!!? ダッがぁは!!」絵から出てきた男がオレとぶつかり

盛大に転んだ。

「ぐっふウッダ!!」オレはいきなり絵から飛び出してきた大人の男に

跳ね飛ばされてしまった。

 

顔が胸にぶつかって視界を奪われたあと、あろうことかヤツは

腹から胸にかけて蹴りを入れてきたのだ! 信じられるか!?

 

人間だってドアを開けるときは、前に人間がいるかもしれないから

そっと開けるだろ?

それがコイツは、ポータルからいきなり出てきやがった!

まったく、マナーというものを知らないらしい。

 

オレさまが怒鳴ろうとした時――

 

「助けてくれ、ラベンダー、サンタ界が大変なんだ!」

第8輪 ローヌ川の憂鬱

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

大丈夫よ、いままでだって耐えてきたじゃない

 

                 ――ラベンダー

 

川を流れるゴミの写真

 

オレは夕陽に輝くエメラルドグリーンのローヌ川をずっとながめていた。

はあと吐いた息が白かった。

 

香りで体温を温かくしているので、寒さはあまり感じない。

 

「ねえ、なんか良い匂いしない?」

近くを歩いていた金髪の女の子がとなりの体格のいい男の子に話しかけている。

 

ちょっと香りを出しすぎてしまったようだ。

全ての生命の元気の源である太陽のようにエネルギッシュなのに、

それでいて自然に受け入れられる親近感のある香り。

 

ん? もっと女の子受けのする描写でたのむって?

 

オレの好みじゃないんだけどなあ。

 

さっぱりとしてフルーティーで、初恋のように甘酸っぱい香り……。

かーっぺ! こんななよっちい言葉はオレのイメージに合わない。

 

川の流れを見ていると心が落ち着いてくる。

このオレンジさまにもストレスはあるし、不満だってもちろんある。

それなりに自由に生きちゃあいるが。

 

主にだれに対する不満かは言わないでおく。

 

(お前ら人間に決まっているだろ)

 

川を見ていると心が痛むことがある。

投げ捨てられた空き缶やゴミ袋、あとはなんだかよく分からないものが

たまに流れてくるからだ。

 

つい拾おうとベンチから立ち上がってしまったが、すぐに腰をおろした。

 

まあ、精霊の世界にもいろいろとルールがある。

やっていいこと、いけないこと。干渉できること、できないことの

決まりというものがある。

 

だから、オレを責めないでくれ。

 

(やっていいことというのは、代表的なのは

たとえば選ばれた人間の人生を手助けすること。イエスとか、いまオレと仲良しの

はげのおっさんとか。あとは戦争や災害時に被害を最小限に

とどめるようにしたり、予定にない疫病をこらしめたり。

ほっといたら自然界そのものが危なくなってしまう状況だと、

オレたち精霊の出番というわけ。

 

反対にやってはいけないことというのは、人間の抱えた課題に直接手を貸すこと。

たとえば、いまオレたちがゴミを拾いまくったり木を植えまくって問題を解決したら

どうなると思う? 

自分が親だった時、子どもをどんな風に育てるかってことだ。

だから場合によっては疫病でも放置したり利用したりすることもある。

 

それと意外に思うかも知れないが、人間を殺すことは禁止されていない。

良くも悪くもないグレーゾーンだな。

いいかげんにしないとゲンコツが降ってくるのはどこの世界も同じだ)

 

科学ばっかり進歩しやがってなぁ。まったく。

 

「〈ダレカさん〉のせいかもしれないわよ。ごみが流れているのは」

 

後ろから声をかけられた。

 

この香りは……。

 

「はっ、なんで〈ダレカさん〉がそんなことするんだ?

 

「川をごみで埋め尽くせば、自然にごみを捨ててはいけないということを

ニンゲンに伝えられるから?」

 

 「やめてくれよ……その前にオレらが耐えられない」やつの言葉にオレは苦笑した。

 

となりを見ると、あわい紫色の髪の少女が座っていた。見た目は14歳ぐらい。

オレよりも少し年上の姿だ。匂いでわかったがいまはおだやかな気分らしい。

 

水平線に浮かぶ、冬の寒さを吹き飛ばすような夕陽が少女を照らし

顔を星色に輝かせる。

その笑顔は、どんな画家にも描けない芸術を見ているようだった。

 

……服のすけ具合も含めて。

 

「大丈夫よ、いままでだって耐えてきたじゃない」

 

「どうだろうな。ところで何しに来たんだ?」

 

「さっきのことまだすねてるの?」

 

「さっきのこと? オレはローヌ川が見たくてここに来ただけだ」

 

「そう? じゃあほら、帰ろ。夕飯の支度できてるよ」 

 

立ち上がり手招きするので、オレとラベンダーは歩き出した。

 

「今日は何が出てくるんだ?」

 

「グレゴリアックハンマーのポワレとオレンジの香りをまとったMs.ベパチョと

シナモン風味のタイタンタルト・ゼウスンチョコレート添え」

 

「グレ……ベパ……? なにそれ」

 

「味は保証する」

 

「料理の腕前は知ってるけど、それハマってんの?」

 

「名前が長いとなんかおいしそうに感じるでしょ」

「いや、わからん」

「わかれよ」

「わからん」

 

第6輪 マノン・ガトフォセ4

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

棒を持って歩くラベンダー

 

――ガトフォセ家のリビング――

 

「はい、これをぬっておけばひとまず大丈夫」

マノンはピエールの赤くなった腕に、ラベンダーやサンダルウッドから

調合した薬をぬってあげていた。

 

「イィッヅァ」

「がまんして」

 

[うーん人助け! 愛ね]

 

「これで少しは腕のキズもよくなると思う」

「お母さんになんて言い訳したらいいと思う?」

 

[頑固なジャガイモ野郎共(ドイツ人)に、

ちーとばかし英才教育をほどこしてやったぜ。

!? これはカッコイイ!]

 

「プッフ――え~とそうね。
階段から転げ落ちたとかでいいんじゃないかしら」

「それでごまかせるかな?」

「それで納得すると思う」

「でも、ちょっとマヌケすぎない?」

「じゃあもう言い訳なんてしないで、正直にイジめられたって言えばいいじゃん」

「それは恥ずかしいんだよ」

 

[恥ずかしい・・・? 自分の顔と体を鏡で見たことがないのかしら?]

 

「くっ……」

マノンはのどもとまでこみ上げた笑いをおさえると共に、

おさななじみのこの体たらくっぷりにあきれていた。

 

「でも本当にありがとうマノン、
きみはぼくの天使さまだよ」

 

[この時はまさか、自分がピエールの妻になるなんて

マノンは思ってもいなかった]

 

「気持ち悪いこと言わないで!」

「へ!?」

「あーごめん、こっちの話――ちょっと待ってて」

 

マノンが急に奥の部屋へ走っていったので、ピエールはきょとんとしてしまった。


「いまの言葉……そんなに気持ち悪かったかな」

 

*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ


マノンの部屋。

 

「ちょっと! 横でうるさいよ」

「マノンも笑ってたでしょ?」

「あ、あれは、すごい、おもしろかったけど」

「でしょ? あのキズだらけの腕!
ポテト野郎からエグザゴーヌ(フランス)を守ってやったぜって言えば
お母さんもお小遣いをくれるよ」

「ふッ――いや、ゲンコツしか、なら、いっぱいくれると思う」

「イジメから助けてキズの手当てまでしてあげるなんて、マノンはやさしい子だねえ」

「ラベンダー、だれかといる時に笑わせるのやめて」

「いまマイブームなの。ナレーションつけるのおもしろくない?」

「おもしろいけど困るの!」マノンはほおをふくらました。 

 

(正確にいうと、紀元前の頃からずっとやっていたから
もはやナレーションの神として祀られてもいい境地 by ローズマリー)

 

マノンとなかよく話しているのは、
あわい紫色の髪の少女だ。

 

年はマノンと同じ14歳ぐらい。

ローマ帝国風の白いワンピースを着ており、
左手首にはミントを思わせる天然石のブレスレットをしている。

 

(なに? ローマ帝国を知らない? なんのアニメだって!? 

まったく最近のガキンチョは……。

かつて世界で一番だった強国も、時代の流れには逆らえないのね by ラベンダー)

 

お花畑にいるようなフローラルな香りをふわりと空間に響かせながら、

ラベンダーは言った。

「マノンは、どうしてそんなに優しいの?」

「え?」

 

いきなりそんなことを聞かれるとは思っていなかったのでマノンは困った。

 

「べつに、ふつうだよ」

「ふつう?」

「困っている子がいたから、助けただけだよ」

「でも、それをできるってすごくない?」


「……」

 

「……」


「すごいかはわからないけど、ただ、体が勝手に動いちゃって」


「……」


「ああ、またやっちゃったなってあとになって思って。
後悔するんだけど、ほっとけなくて」


「……」


「どうすれば世界中の人が幸せになるんだろうって考えると、

行動するしかないんだと思う」

「それがまちがいだったらどうするの?」

「どうゆうこと?」

「自分がやってきたことが、まちがいだって気づいた時。
今までとちがう生き方のほうが正解だったと気づいたとき、どうするの?」

 

「うーん……。でも、ラベンダーが大好きなローマ帝国も、

まちがったりしたんでしょ? 

ローマ帝国でさえまちがうんだから、もうしょうがないと思うの。

そのときは、学校の先生かラベンダーに答えを教えてもらうよ」

 

「……」

 

「何点……ですか?」

 

「32点」

「えー、なんで?」

「フフ、地球はそんなに甘くないわ」

「えぇ~」

「ジャマして悪かったわ。さ、早くピエールのところに行ってあげて」

 

すずしげな顔のラベンダーにうながされたマノンは、

ピエールのいるリビングへと戻ったがその途中、奇妙なものを見つけた。

 

「あれは何……?」

「女好きの愚かな魂の末路よ。救う?」

「さすがにわたしも、あれは――ムリかなぁ」

休日のミルラさん UFOに試乗しました! 

ワンシーン小説(長い文章が苦手で雰囲気だけ楽しみたい方はこちら)

UFOに乗ってハワイへ行くミルラさん

 

ミルラさんは、エジプトのはるか上空から地中海をながめていた。

ふかふかの座席に腰かけて、あまりのやわらかさに心の中で飛び跳ねていた。

 

ふふ、この乗り心地、うふふ。地球にはない物質だな。

なんだろう? すっごいやわらかいのにすっごい丈夫だ。

今こうやって念力で引きちぎろうとしているのに、ちょっと伸びただけだ。

もっとも本気でやればすぐちぎれるだろうが、そんなことをすれば

周りに怒られてしまうし、座席も壊れてしまう。

 

オリエント・アロマ・アカデミーにはUFOを開発する部活がある。

UFO FOR YOU部だ。

私たちは何もしていないが学生たちが自分たちで

宇宙連合から技術スタッフを呼んで、UFOを自作している。

 

いま私が試乗しているのはアレクサンドロスXXⅦ(27)。

アレクサンドロスⅠの頃を知っている身から言わせてもらえば、

素晴らしい乗り心地だ。

ただ個人的には、うーん、ズルカルナインのダイダロスがやはり最高だな。

UFO自体の振動数と艦内の空間の造りが良い。

植物の精霊と周りの自然環境にも優しい造りなのにスピードもそれなりだし、

それにワープの酔いもない。どういうこっちゃ。

ステルス航行時でも通常航行時とほとんど変わらない性能を出せるし、

相当な努力の賜物だろうな。あ、でもステルス航行時は確か……

何かしら欠点があったような。ま、大したことはない。

乗り物なんてしょせん、快適な乗り心地とスピードがあればそれでいいからな。

 

(ステルス航行というのはUFOの姿を周りの精霊や宇宙人から視認できなくすること。

ただ、人間はステルス航行時でなくともUFOの姿を見ることはできない。

次元がちがうからな。精霊を視える人になら、UFOも視えるだろう。

もちろん普通の人間にもUFOの姿を見せることはできる。

ダイレクト航行という機能だ。上の次元にあるUFOを三次元に物質化する機能で、

これを使えば人間にもUFOの姿が見えるようになる。

だが負担がデカい。UFOが物質化するということは、中にいる私たちも

物質化してしまうということだ。ダイレクト航行のレベルにもよるが、

少なからず霊体が三次元の物質に近くなってしまう。

物質化に慣れていない者にとっては苦痛だろう by ミルラ)

 

UFO FOR YOU部。素晴らしく才能あふれる若きクリエイターたちよ。

その行動力、少しだけ勉強にも使ってくれないかなぁ。

 

「乗り心地はどうですか? ミルラ先生」

横を向くとUFO FOR YOU部の部長が立っていた。

「ああ、快適だよ。特にこのイスは素晴らしく気持ちがいい。疲れが取れそうだ」

「本当ですか!?」部長は嬉しそうだ。

「ハワイで用事を済ませたら、すぐ戻るから待っていてくれ」

「そういえば、用事ってなんですか?」

「ちょっと……連合のな」

包帯のシワが黒い影を作ったのを見て、聞いてはいけないことを聞いてしまったと

部長は口をつぐむ。

「も、もう少しで着きますので、お待ちください!」

そう言うと展望室から出て行ってしまった。

 

ミルラは再び外の風景を見たが、その光景に目を見開く。

「な、なんだこれは!?」

オレンジ色の空が広がっていた。しかし、夕陽の色ではない。

今は昼を少し過ぎたぐらいだ。では、このオレンジ色の空はいったいなんなのか。

ミルラは目を凝らしてみた。煙?

オレンジ色の薄い煙が辺り一帯にただよい、空を汚れたオレンジ色に

染め上げていたのだ。

 

ミルラは下を見て、言葉を失う。

下は赤黒い塊の霧がドーム状に渦巻いており、何も見ることがない。

だが、ミルラはこの場所が! この国が! 何の国だか見当がついていた。

 

ミルラの頭にいつかの『日の昇る評議会』でのできごとが思い起こされる。

 

東洋風の黒い衣装を纏ったスキンヘッドの男性が見えた。

「我々は、この国から撤退する」

 

昔はこの国の空を、龍がたくさん飛び回っていたのに……

 

精霊に見放された国。

 

大気を汚す国。

 

地球の敵。

 

終わったな、中国。

ミルラは目をつむる。そして開けると、小さな龍のような形の国が目に入った。

 

「あ。日本じゃん! アマちゃん元気かな。忙しいだろうなー。

いつか一緒にパンケーキ食べたいな」

 

ミルラさんは、やはり疲れているのか、ひとりごとを言っていた。

 

エジプトから空の旅を楽しみながらゆっくり移動して20分。

とうとうミルラさんは、ハワイへとやってきました。

 

このブログ『のほほんほわほわ』の由来とは

いっくん日記

お題「ブログ名・ハンドル名の由来」

 はてなブログの今日のお題のスロットを回してみたらこんなお題が出た。

ブログ名は「のほほんほわほわ」。

のほほんほわほわ。口に出してみたが、なんとも力の抜ける名前だ。

たしか他の人とは被らない名前にしたいと思ってつけた名前だ。

そういう理由だったはず。

いや、本当にそういう理由だっただろうか。

今回、いい機会なので改めてこのブログの名前を分析してみようと思う。

のほほん。ほわほわ。

まずは二つに分けてみた。

のほほん。

goo辞書によると、何もしないで、または気を使わないでのんきにしているさま。

と書かれている。

ほわほわの意味は調べてみてもよく分からなかった。

そういえば、ほわほわってなんだろう?

個人的な推測だが、“ほ”という言葉は熱や自由を表しているのではないだろうか。

ほかほかするとも言うし、ほっとするとも言う。

温度や安心、リラックスの意味があるのは間違いないだろう。

それと、この“ほ”は“歩”という漢字に変換できることからも、やはりマイペースや

自分らしさを表す言葉だろう。

歩む速度は人それぞれなのだから。うん、きっとそう。

“ふわふわ”という宙をただよっている様子を表す言葉の中に“ほ”を入れることによって、

少しの浮遊感をただよわせながらもリラックスして気ままに生きている感じを

強調する“ほわほわ”という言葉になるのだ。

 

つまり、“のほほんほわほわ”とは最強のマイペースである。

常識、社会の当たり前、大人の暗黙のオキテ、年功序列の上からの理不尽ルール。

それら低次元から外れた高次元のパラダイス。

そこに位置するのだ。すごい。

自分でも驚きだ。明らかにそんな意味をこめて当時の自分がつけたとは

思えないが、カッコイイのでこの際この路線で行こう。

このブログ『のほほんほわほわ』は、

歩きタバコ、ひよこミキサー、原発、ネット社会での見知らぬふり、お客様は神様。

環境問題について何も知らないくせに仕事ができるだけで偉そうにふんぞり返る上司。

できて当たり前が当たり前だと思っている人。

そういった現代社会の常識という、宇宙から見た非常識から一歩抜け出した

愛と自由のウェブサイトである。

 

いや、これは……この説明は、壮大すぎるな。

これでは、のほほんほわほわの要素がない。なさすぎる。

のほほんほわほわどころか、どろろんどろどろだ。

この地球のニンゲン世界の大惨事をことあるごとに発信するかような

全くリラックスできないブログになってしまう。

 

のほほんほわほわとは、とにかくまったりぐったりと、私が小説を書き、

言いたいことを言う自由気ままなブログである!

 

自由を象徴する女神像

 

ちなみにハンドル名の由来は、あどけなさと親近感を出したかったから。

以上である。

第5輪 マノン・ガトフォセ3

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

怒って石を投げる少女

「あいっつら」

マノンはプロ野球選手のように美しいフォームを決めると、ビュンっと

握っていた石を投げた。

 

「うわ!?」ルカは動揺した。

「わ!」ガブもおどろく。

 

「ちっ」

 

石はルカの髪をかすめただけで当たることはなかったが、ふたりを怖がらせることは

できた。

ルカは振り返って大声を出した。

「ばーかばーか、へたくそ! 男女!」

 

マノンが怒ってこぶしを振り上げると、ルカとガブリエルは急いで去っていった。

 

「なんなのあれは! ほんっと子供ね」そしてピエールを見る。

「え、えっと、マノン、助けてくれてありがとう」

弱々しい声を出すピエールにマノンは少しイラついた。

 

ピエールがマノンをちらりと見ると、

赤い髪のせいで怒りで頭が燃えているように見える。

それがよけいに怖さを倍増させた。

 

学校の先生、または親のようなかしこまった声でマノンはしゃべった。

「ピエール、あなたは毎度毎度イジめられてはずかしくないの!?」

返す言葉もなかった。

「ごもっともです」

「男の子でしょ! やられたらやりかえさなきゃ。

いつまでたってもイジめられるのよ」

「ぼくが女の子で、きみが男の子ならよかったのにね」

「そういう問題じゃないでしょ!! あなたって本当に――」

 

また始まったとピエールは思った。

助けられたあとに始まるお説教タイムだ。

あーでもないこーでもない、とウダウダ言われるのは苦痛だった。

ピエールはたまにこう思う。

イジめられているほうが楽かも。

 

そう思った瞬間、マノンは顔をゆがめた。

「そんな考えだからイジめられるのよ!」

「え?」

一瞬しまったという顔をしたあと、

マノンはそっぽを向いてもう知らないとばかりに歩き出した。

 

「じゃーね。もう次イジめられても自分でなんとかして」

「まって、ゴメン、次はなんとか自分で解決できるようにするよ」

「はいはい、聞き飽きた」

 

マノンはおせっかいな自分に嫌気がさしていた。

正義感が強いのって、疲れる。イジメっ子はなんであんなに楽しそうなのかな。

わたしもそっちがよかった。

それにしても、ピエールだけで今月は6回も助けているような……

そのことに気づいた時、イラっとした。

「もう! 男なんだから本当にしっかりしなさいよ。いいかげんにしないと

わたしがイジめるわよ!」

「ひゃ!?」

そう言ってマノンはピエールにぬいぐるみを投げつけた。そして帰ろうとしたが――

「あ、それ」

 

マノンはピエールの腕がすりむけていることに気づいた。

2016年 2月22日 曇り 実話

いっくん日記

 (自分で言うのもアレですが、頭のおかしい人の話なので、作り話ぐらいに思って頂ければ、私としても楽で助かります)

 夢の中で私は、T神社にいた(名前を出して良いかどうか分からなかったので、一応伏せることにする)。寝る前に、ヘミシンクの『ザ ビジット』を聴きながら寝た影響だろう。T神社は、私が幼稚園の頃から通っている神社だ。特定する人がいるのであまり詳しくは書かないが、都内の神社の中では美しい部類の神社だと言っておく。

 時間は深夜だった。深夜に神社に行くなんて愚行、元旦でもなければ絶対しないが、夢の中で私は深夜のT神社にいた。
 暗闇の中で、雲の間から満月が顔を覗かせるが、境内を照らした金色の光はすぐに消えてしまい、再び静寂と闇の色に染め上げられた深夜の帳が降りて来る。
 境内の中には、どうやら私以外にも数人の人たちがいるようだった。
 深夜であるのに、なぜか社務所が開いていて、ひとりの巫女さんがいた。私の前に巫女さんがいる。
 私がそこで、巫女さんと会話したのかは分からない。何かを受け取ったのかもしれないし、何も受け取っていなかったのかもしれない。そもそもしゃべっていないのかもしれない。
 
 次の場面では、私は境内の中を歩き回っていた。
 ここがあの、T神社なのだろうか?(T神社だとなぜか分かっていた)
 実際のT神社とは風景が全然ちがうし、他の神社と言われたほうがしっくりくる。非物質の世界だと、こういう感じになってしまうのか。
 薄気味悪くて、不気味な像や小物がいろいろ置いてあって、正直呼ばれても来たくない。そういう印象だ。しかし、夢の中とはいえ今ここいるということは、意味があるのだろう。魔物は見ていないが、もしかしたら忘れているだけで、魔物もいたかもしれない。
 私はその手の専門家ではないので、どうしてこのT神社がこれほど不気味な神社になってしまっているのか原因を特定なんて出来ないし、感覚的なものなので、科学的な根拠やデータを提示することが出来ない。それが出来れば伝える苦労はしないけど。
 絶対にこれが原因とは決められないし、もしかしたら間違っているかもしれないが(その時は、ゴメンね)、可能性としてひとつ挙げられるとしたら――

 ――人々のエゴ、自分勝手なお願いごと

  T神社は都内でも有名どころのひとつで、お願いごとなんて特にされる神社だ。小学生の頃はいっぱい飾ってある絵馬なんかを見て「みんないっぱいお願いごとしてるんだ、スゲ~」なんて思っていたけれど……
 今考えてみると、それは恐ろしことなのかもしれない。
 欲望で聖域が穢されている。
 お願いごとを全くするなとは言いませんが(もっと厳しく言ったほうが良いのかなぁ)、神社は本来、平和や愛を祈るところ。あらゆる生命の垣根を超えて、世界、宇宙の幸せを祈り、平和と愛を感じるところだと思います。もう少しだけでよいので、参拝する時は考えてみてください。
 自分のお願いごとを叶えるパワーはみんな持っているんですから、人のため、誰かのためになるお願いごとをするほうが、まだ健全です。
 不正や悪事を働いている人にしても、どうしてわざわざ神社にいくんでしょうかねえ? わざわざバチに当たりに行くだけならまだしも(行かなくても、悪事をした瞬間に見えない世界ではバレていますが)、自分勝手なお願い事をして神社を汚したりするんですから、とんでもない。
 一生懸命頼み込んだからって叶えてくれるものではないでしょうし、特に頼まなくたって、助けたいと思った人なら助けます(専門家ぶってますが、私は一般人です。間違っていたらすいません)。

 私が神さんの立場だったらもう、神社で女子大生が自分勝手なお願い事した瞬間ブチ切れて「はいもう日本沈めまァァァす」とか言っちゃいそうwwww
 ゴメンね、冗談だから。こんな神がいるの!? とか思わないでねwww 

 まあ、全くいないとは断定できないが。ヒトによりけり。
 あと、「恋愛ごとで有名な神社に参拝したのに、彼女と結婚するどころか別れた」と言う人もいますが、別れたほうが良かったから、縁を切ってくれたのかもしれませんよ?

 ――境内をある程度、散策したところで場面が切り変わる。

 さっきのT神社とは全く違う場所だ。明るい室内で、活発な雰囲気。今度は私はどこぞの建物の中にいた。作業着を着た人たちが、作業場で何かを梱包したり包装したりしている。
 詳しいことは覚えていないが、私はがっかりしていた。
「~さん、引っ越したのか~」
 どうやら誰かに会いに来たようだった。
 引っ越しというのは、どう意味でだろう。言葉通りの意味でよいのだろうか。もしかすると他の解釈があるのかもしれない。

 そこで目が覚める。現実だ。
 現在は仰向けの姿勢だが、頭のてっぺん、枕元に気配を感じる。
「あ、やべえ」声には出していないが、こういう雰囲気が読み取れた。
 どどど(何かが離れた)
 どどど(パニックになっているのか、なぜかまた頭のほうに近づいた)
 そして消えた。
 姿を見てはいないけど、小人のおっさんみたいな雰囲気が感じられた。
 でも、どどどの重量感はモルモットぐらいあった。 

 おかしい。確かに現実にいるはずだ。なんだこれは……
 寝てるんだから驚かせないでよ。何モンだよアイツ! 私の過去世の知り合いか? 
 自分でも驚いたが、意外と冷静だった。
 そしてまた眠りについたが、眠りにつく直前、誰かに足でドンッと脅され、金縛り状態になった。

 ふーん、そんなの効かないけどね――とか念じたけど、内心ビクビクしていたのは、相手にはバレていただろう。

 こんな濃い内容のことがあり、朝9時ごろ、起きた。

 今日は2月22日か。28日のカクヨムのオープンまで、今日を入れて6日しかない。2日は仕事があるから、残された時間は4日だ。
 物語は完結しているが、それまでに出来上がったあとがきの最終調整をしなければならない。自分がこんな内容のことを書く日がくるとは……言葉のひとつひとつに、責任がギュッと詰まっている。
 しかし、疲れがたまっているのも事実だ。放射能のことを知ってからというもの、食生活については気を付けていたが、我慢の限界だった。
 ふと私の頭に、久しぶりに外食しようというアイディアが降ってくる。
 思いついたアイディアを即実行するのが、私の良いところだ。
 シャワーを浴び終わり、パソコンに向かうともう10時ぐらいだった。最近は寒い。シャワーの時間も伸びてしまうのが悩みだ。
 11時30分まではあとがきの編集をして、それからは久しぶりに、外食をしに出かけた。
 私がお気に入りのビュッフェのお店にたどり着いたころには、12時10分になっていた。
 美味い。
 何ベクレルかは想像したくないが、やはり美味い。汚染されていても、味が変わらないというのは怖いことだが、ず~っと我慢していても気が滅入る。たまには遠慮せず食べても平気だろう。
 普段は発芽玄米と味噌汁、青汁、ごぼう茶、果物とパンぐらいしか摂取しないし、一日一食か二食ぐらいしか食べないが(勘違いしないでほしいが、放射能の危険を知る前から、私の食生活はだいたいこんなもの)、やはりたまに食べると超美味い。私がミシュランの審査員だったら、三つ星はくれてやる。ただ、そんなことをしてしまえば即クビだろうが。
 周りのお客さんは、あまり放射能について気にしている人はいなさそうだった。いや、分からない。もしかしたら表に出していないだけで、いたかもしれない。

(2016年12月1日。今現在周りの様子からすると、やはりいなかったと思う)
 汚染されていても、食べ物はこんなに美味しいのか。ずっと噛みしめていたくなるほど、美味しい。たくさん食べれるって、幸せだ。
 これだけ幸せな気分になれるんだから、汚染されていない食べ物だったら、どれだけ幸福だろうか。でも、汚染されているかどうかなんて、美味しさとは関係ないものだからなあ。
 すっごく美味しいからといって、汚染されていないことの証明にはならないから、困るわけで。
 でも、今は息抜きのためにきているので、放射能やベクレルのことは頭から叩き出した。思う存分、食べてやった。幻想かもしれないが、それでも幸せだ。


 願わくばいつの日か、汚染されていない空気が吸いたい。汚染されていない水が飲みたい。なんにも心配することなく、食べ物を食べてみたい。
 
 ふぅ~。

 満足した。お腹いっぱいになるまで食べたのって、どれくらいぶりだろう。

 お会計を済ませお店をあとにした私は、近くのT神社を訪れた。
 夢で見たこともあるせいか、なんとなく足がそっちへ向かってしまったのだ。思えば悩みがある時は、いつもこの神社を訪れて考えたものだ。自分が本当に正しいことをしているのかどうかとか。

 境内をいつも通り一周すると、私の惚れている木が今年も花を咲かせていたので、いくつかある木製の正方形の椅子に腰かけ、眺めていた。
 少しすると私の隣の椅子に、胸にカメラを下げたおじいさんが座った。おじいさんは杖を突いていて、歩くにしてもひとつの行動をするにしても、やっとだった。
 おそらく90歳は超えているだろう見た目で、白髪で、あまり肉がなく、今にも折れてしまいそうで。失礼かもしれないが、生きているのが不思議なぐらいだった。
 隣同士で可愛い花を見ていたら、何の気なしに、自然と会話をしていた。東京の人は本来冷たい。こんな会話なんてありえないかもしれないけど、このおじいさんとは、知らない人なのに、普通に会話をすることができた。いや、会話だっただろうか。
 言い訳をするようで申し訳ないが、私は一生懸命耳を傾けた。しかし、7割がた何を言ってるか分からなかったので、音楽で言うところのセッションみたいに、なんとかフィールで理解した。
 おじいさんは、私たちの前で咲いている可愛い花の写真を私に見せてくれた。一月に撮ったらしいのだが、そのときのほうが良く咲いていて、可愛かった。
 おじいさんは同じ写真を何枚も持っているので、そのうちの一枚を私にくれた。
 私は、メチャクチャ嬉しかった。携帯の写真にはない美しさと喜びが、そこにはあった。
「うわあ、ありがとうございます」
 おじいさんも、嬉しそうに見えた。おじいさんは日本人だけど、瞳の色が薄茶色で、とっても魅力的だった。
 こんなことで笑顔になれるのになあ。そう思った。
 笑い合っている私たちの近くへ、老人ホームから来たと思う、車椅子に乗った大勢のおじいさんとおばあさんが一列に、ヘルパーさんと共にやってきた。
 ヘルパーのおばさんが、私の惚れた木を見て、車椅子のおじいさんに尋ねる。
「私とこの花、どちらがきれい?」
「これ」おじいさんは、素直に花を示した。
 笑いさざめく一同に、私たちもつられて笑ってしまう。
 カメラのおじいさんは、持っている写真をまた何枚か、おじいさんとおばあさん、ヘルパーさんに配っていた。
 幸せをおすそ分けしているみたいで、その光景をみているだけで、私の顔からも笑みがこぼれた。でもふと、悲しい気持ちになってしまった。
 この方たちは、第二次世界大戦を経験したり、戦後の日本を立て直してきた方たちだ。
 私は、拳を握りしめ、その先の辛い気持ちを押し殺した。
 車椅子の一団が通り過ぎたあと、また私たちふたりだけになった。
「アタシも本当は入りたいんだけどねえ」
 切なそうにおじいさんはそうおっしゃった。
 それからまた、花とか、おじいさんの撮った写真について、話しあった。外は寒いけど、おじいさんと話していると、なんだかあったかい。
 こんなことを言われるのは迷惑かも知れないが、私はなぜか、言うつもりのなかった放射能や原発のことについて話してみた。
 すると何かを察したのか、おじいさんのほうも、第二次世界大戦のことを私に教えてくれた。それはたった一言、これ以上にない分かりやすい言葉だった。

「大日本帝国、知ってる? 人を殺して英雄」

 重すぎる一言だった。

 人を殺して英雄になるぐらいだったら、私は悪人でいいと思った。

 第二次世界大戦時はアメリカが敵だったが、今回は敵すらいない。あろうことか自分たちの国がそれをやってしまったというのだから、本当にタチが悪い。放射性物質は目に見えるものではないし(場合によっては見えることもあるみたいだが、それは相当ヤバイ時だろう)、生物濃縮を考えたら、黒死病や戦争なんかよりも、もっと恐ろしい。しかも、いまだ大勢の国民が、放射性物質の恐怖、汚染された食品の危険性を知らないのだ。普通に働き、遊んでいる。至上最悪の事態だろう。
 戦争みたいに、敵を倒してはい終わりなんて、簡単なものではないのだ。今も太平洋を含め、自然や国中を汚染し続けていること。東京は人が安心して暮らせるところではないのに、東京オリンピックをやるために、いろいろと画策していること。事実を黙っていること。こんな国にするために、この方たちは、戦ってきたんじゃない!
 
 その後、カメラのおじいさんとは握手して別れた。境内の真ん中の参道へ行くと、遠くのほうに列をなし、神社をあとにする車椅子のおじいさん、おばあさん、ヘルパーさんたちが見えた。
 入口の向こうへ消えていく様子が、黄泉の国へと向かうように視えてしまい、さっき押し殺した気持ちが、ドッと胸に込み上げきた。

――戦後の日本を立て直してくれた方たちを、今、再び放射能で送り出すことになってしまった。ごめんなさい
 

 もう、私には分かってしまった。今朝の夢といい、私はこのT神社に来させられたのだ。でもなければ、今私がやっていること(ラベンダーさんを書くこと)に重なるように、こんな偶然あるわけがない!

 ○○っち(祀られている神)、私にこれを書かせるのか! なんで私なんだよ! 私のほかに、優れた作家なんていっぱいいるし、霊的な専門家の人たちに言わせればいいじゃん! もっと人格的にも優れた聖人みたいな人たちにさ! なんで、私がこんな経験を…… 

 誰かに丸投げできたら、どれだけ楽だろうか。今日もいつも同じように、胃腸が縮んだ。


 18時50分。地元の銭湯にて

 うわ~、極楽だ。
 足を伸ばせるって幸せだ。
 普段は2、30分で出てしまうのだが、しばらく湯船に浸かっていなかったせいか、この日は1時間も中にいた。
 もちろん一時間ずっと湯船に浸かっていたわけではなく、出て冷や水を浴びたり、また湯船に浸かったりを繰り返していた。
 いつものこの時間なら14、5人ぐらいは人がいて混んでいるのだが、雨のせいか、この日は10人もいなかった。
 銭湯は便利だ。460円を払えば、電気風呂、マッサージ風呂、炭酸風呂に入れるのだから。
 ここの銭湯が閉まるのは23時。
 22時30分ぐらいになると人もほとんどいないので、シャワーを全開にして、プチ滝行なるものをして、心の中で真言を唱えながらはしゃいだりしたこともある。
 若気の至りだ。
 湯船に浸かっている間、頭の中では今日あった出来事、『ラベンダーさん』のこと、原発のことで、私は嘘を書いてしまっていないかなど、そういうことが、目まぐるしくぐるぐると回っていた。
 赤富士の隣に掛かっている時計を見やると、19時55分。最初に湯船に浸かった時から1時間と5分が経過していた。
 あと5分したら出よう。そう思いながら湯船の縁に腰を掛け、水面に揺らめく足を眺めていた時、声を掛けられた。
「あのー、よく来るんですか」
 左を振り向くと、50代ぐらいのおじさんがいた。頭は泡だらけだ。
「はい、前は一週間に一度来ていたんですが、最近は立て込んでいて、久しぶりですね」
「お~、お金持ちじゃん」
「えへへ(お金持ち?)」
「今日初めて、ここに来たんですよ」恥かしそうにそう言う彼の気持ちは、よく分かる。私も4年前に銭湯デビューした当時は、敵陣のど真ん中に潜入するスパイのような気持ちだった。でも一時間経つと、恐竜みたいに適応していた。
「あ、そうなんですか」
「そこは、熱い?」
 おじさんは、私が今腰かけている湯船の左にあるボコボコ泡立った危険な色の湯船に目を向けた。
「一番熱いですね。人間が入るレベルじゃないですよ」
「わっはっは! なんだそりゃ。だってさ」おじさんは、隣の坊主頭の人に話しかけた。
「あ、そうなの~。ゴメンね、この人今日初めて来たからさ、ありがとね」
 坊主頭の人はそう言うと、私にお礼を言ってきた。再び最初のおじさんが話しかけてくる。
「今お兄さんが入っているそこの湯船は、熱いの?」
 私は銭湯にあるひとつひとつの湯船について、おじさんにレクチャーしてあげた。
「そうなのね~。教えてくれてありがとう」
 会話が終わり、私は湯船に肩まで浸かり足を伸ばす。少しすると、坊主頭の男性が隣に入ってきた。年は40代ぐらい。顔は芸能人で言うと、あばれる君。あばれる君から勢いを抜いた感じ。マイルドなあばれる君とでも言おうか。
 マイルドなあばれる君は、背中に入れ墨を入れていたので、そっちの人なんだと思った。銭湯ではよくあることなので、私は特に驚かない。あばれる君が柔和な笑みを浮かべて話しかけてくる。
「今日はねー、あの人が腕が痺れるって言うから、連れてきてあげたんだよ。ここはよく来るんですか?」声もあばれる君だ。
「はい、たまに。身体、悪いんですか?」
「う~ん、なんか悪いみたいだね」
 そこからなんやかんや会話をしていると、おじさんが身体を洗い終わり、会話の輪に入ってくる。50代ぐらい(外見は60代かもしれない)の黒髪交じりの白髪のおじさんは、芸能人で言うと、高田純次っぽい。
 特になんか特別な話をしたわけではないけれど、知らない人と他愛もない話をするのも、中々悪くはない。私たちは、普通に笑い合っていた。
 話していて分かったが、あばれる君は高田純次より7つ年下で、〝親方〟らしい。
 普通に話している分には良い人なのになあ。
「俺、向こう行ってくるね」
 あばれる親方は、右隣の一番ヌルい湯船へと移動した。
「あの人、あばれる君に似てますよね」私は命知らずだった。
「いや、暴れないよ」しかし高田純次には、意味が通じなかったようだ。
 高田純次は両腕が痺れて痛かったようなので、それで仕事を休んでしまったらしい。なので親方が銭湯へ連れてきたということが分かった。
 私は仕事上、筋肉をほぐす仕事をしているので、こういうのはどんな人でも放っておけない。彼の腕をほぐしてあげ、健康、運動、食生活についてレクチャーすることにした。
 なんだかテルマエ・ロマエという漫画(古代ローマ人の浴場建築技師が現代日本にタイムスリップして、カルチャーショックを受けるという内容。映画にもなっている)みたいで笑ってしまった。
「お兄さん上手いね。どこで働いているの?」
「○○町ですね」
「遠いなあ」
「もうここで働いちゃえば良いのに。お兄さんがここでマッサージすれば、商売繁盛するよ」
「いや、それはちょっと」
「渋谷は遠いよ」
「いや、○○町です」
「渋谷までは行かれないな」
「……(だから○○町だって)」オッサンは、人の話を聞かないのだ。
 時計を見ると、20時35分になっていた。レクチャーし始めたのがちょうど20時ぐらいだから、35分もこんなことやっていたのか。
 18時50分から銭湯に入っているから、1時間と45分もここにいることになる。早く帰って、忘れないうちに今日のことを書かなければいけない。
 高田純次ももう限界みたいで、ふたりで湯船から上がり、ロッカールームへと出る。
 あばれる親方は、血圧測定器で血圧を計っていた。
 着替えながら、高田純次と私は話をする。
「そっか~、渋谷じゃなかったらお兄さんのお店、行ってたんだけどなあ」
「いや、○○町です」
「渋谷はねえ、俺嫌いだから」
「……」オッサン! 聞けよ! ○○町だっつってんだろ! こんなコントやドラマみたいなことが本当にあるのか……。 
「名刺ない?」
「すいません、名刺はないですね」
 名刺って、どれぐらいの年齢から持つのだろうか。そういえば、去年の9月までバンドを組んでいた26歳のギタリストの人は、名刺をちゃんと持っていたな。私はミュージシャンとしてはどうやら、意識が低かったみたいだ。
「よかったら名前教えてもらって良い?」
「ええ、田谷野です(言っちゃった)」
「ありがとう、楽になったよ。じゃあね」
 特にたいしたことはしていないが、あばれる親方と高田純次は私にお礼を言い、去っていった。
 お酒臭いしタバコ臭い人たちだったけど、人間味があって、好感を持ってしまった。
 普通の人と大して変わらないんだから、普通に働けば良いのにと思った。

 今日はなんだか、いろいろと濃い一日だった。忘れた頃にこういうことがあるのだ。災害かよ。

 疲れたというか、浸かれたというか、憑かれたのかもしれない。

 事実は小説より奇なり。
 脚色を一切してないし、ありのままあったことを書いたけど、これが実話だって言ってるんだもん。やっぱり変だと自分でも思う。
 あばれる親方の下りなんて、絶対作ったと疑われてもおかしくない。
 
 もし私が読者なら、『こいつ痛過ぎクソワロタ』ってタイトルをつけて、2ch掲示板に晒す。で、笑う。
 そっちのほうが普通だ。健全だ。こんなストレスだらけの世界なんだもん。笑われて、人様のストレス発散ぐらいになれるのだったら、嬉しく思う。

 こんなことを実話って言ってる私の頭のほうがおかしいし、異常なのだ。

 

2016.12.1 追記

 

私は子供に携わる仕事をしているが、今の児童は可哀相で仕方がない。

ふびんだと思う。

親の無知のせいで気ままに子供らしく暮らせるのだから。

上の世代がしでかした後始末をさせられるのは、いつも次以降の世代なのだから。

成長したある日、ふと気になって3.11について調べてみたら

絶望なんて生易しいものではない何かを身をもって体験するだろうから。

 

「あの時教えてくれれば、せめて食事には気をつけられたのに」

成長した自分の子供にこうは言われたくないものだ。。。

 

原発の事実を知った子供

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 あなたの心にルーモス・マキシマ

いっくん日記

ファンタスティック・ビーストを観てきました。

11月23日に。

平日の水曜日だからさぞや空いているだろうとほくそ笑んでいたら、

とんでもない。

めっちゃ混んでる。

 

「なに、みんなヒマなの!?」

 

それもそのはず。11月23日といえば勤労感謝の日だからだ。

もっといえばその日は映画の公開初日なのだ。

混んでいるのは当たり前である。

完全に私のリサーチ不足だ。

 

だが!

 

混んでいようが関係ない。私にはエクスペリアームス並みの切り札があるのだ。

そう、「リザベーション 予約せよ」

 

この生活必需魔法にて事前に座席を確保をしていた私は何のわずらいもなく

真ん中の位置で映画を鑑賞できた。

 

映画館に行かずともスマホにて券を買うことができること。

当日の午前中にそのことを知って、どんどん席が埋まってゆく中

個人情報を必死に入力した末ついに真ん中の座席を購入できたことは、

ここだけのお話。

 

観た感想。

 

もうね、今までの私がアバダ・ケダブラ。

周りの観客もどんどんこの映画にアバダ・ケダブラされて倒れていく。

そんなシーンが私の頭の中で流れた。

 

それぐらいなのだ、この映画は。

 

見終わった後、間違いはあるかもしれないが、

あなたはきっと魔法にかかるだろう。

 

自分でもすごく恥ずかしいことを書いているのは承知の上だが、

この映画を見終わった後のこの余韻! これこそが魔法なのだと思う。

 

いまこの文章を読んでいる人は私とは温度差があることだろう。

「ああ、はいはい、きっとそうなのね」

ぐらい冷たいと思う。

 

それはしょうがない。映画を観ていないか、観たとしてもツボではなかった。

あるいはハリポタがそもそも好きではないのだろう。

 

私はハリポタが大好きだ!

 

「児童書なんて大人が読むものじゃないだろう」なんてあざける方にも、

「大人が読んでもいいんだよ。大人にこそ読んで欲しいんだよ」

と教えてくれたという功績はさておき。

 

もう個人的に大好き!!!

 

 

一番はバーテミィアスだが。

 

 

学生時代は字幕で映画を観ていたが、最近はよく吹き替えで観ている。

単に字幕だと真ん中の席が取れなかっただけだが、

そのおかげで日本の素晴らしい声優たちの声を聴けて良かった。

怪我の功名だ。

 

主人公のニュート・スキャマンダーの声を担当するのは

宮野 真守さんだ。

 

たまに見たアニメで何度か宮野さんの声を聴いたことがあるが、

クセのあるキャラクターが多いように思う。

 

自分の中では声優というよりもお笑い芸人みたいなイメージ。

 

もしあまりにも違ったことを書いていたら、

ファンの方には申し訳ない。

 

その宮野さんの演技がニュート役にすっぽりとハマっていて、

よりファンタスティック・ビーストという映画を魅力的にしてくれているのだと

思うのだよ私は。

 

そして今シリーズで一番の見所はやはり。。。

 

ゲラート・グリンデルバルド vs アルバス・ダンブルドア

 

原作ではダンブルドアが過去に最盛期のグリンデルバルドと決闘して勝利したこと

は分かるが、具体的なバトルシーンが描かれていなかった。。。

 

なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

グリンデルバルドといえばっ! 死の秘宝であるニワトコの杖の旧所有者にして

ヴォルデモートが現れるまで魔法界を恐怖におとしいれていた闇の魔法使い!

しかも若かりしダンブルドアが想いを寄せていたという。

こんっっっな魅力あふれる野心家とダンブルドアの戦闘シーンを

「過去にこんなことがありました。昔は大変だったんだね」

程度にあっさり終わらせやがって……。

 

作者はいったい何を考えているのかと思ったら。

 

学生時代からのノドのつかえがやっと取れた。

 

続編でとうとう、かのふたりのバトルが観られるのだ。

もうっ楽しみで仕方がないよ!

ハリポタシリーズでは見ることができなかった大人の魔法使いのバトル!

上級魔法が飛び交うその迫力たるや息もつかせぬ大活劇!

 

グリンデルバルドは、その考えや生き方が『ラベンダーさん』に出てくる

植物至上主義者に通ずるものがあって、作家としても個人的にも

とても大好きなキャラクター。

 

まだまだこの物語を語り切れていないけれども、

あまり長すぎるのもよくないので最後に一言、言わせてもらいたい。

 

ニフラー最高。

第4輪 マノン・ガトフォセ2

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

「マノン・キャノン!」

 

どてんと前に倒れたルカ。

ビックリして立ちすくむガブ。

 

目からなみだを流しながらピエールが顔を上げると、赤い髪がすぐ目にはいった。

 

腕を組んで、どうどうと立っている姿は男の子みたいだった。

背後の太陽がまぶしくて顔は見えないが、怒っていることがピエールにはわかった。

 

「いてぇじゃねえか、なにすんだ!」ルカが大声を出す。

「なにって、マノン・キャノン」

「いや、ただの飛び蹴りじゃん!」

「うるさい、そんなことはどうだっていいの。14歳にもなってイジメって

恥ずかしくないの? 他にすることないの?」

 

ルカはひざをさすりながら立ち上がった。

 

「こいつ、女だからってもう許さねえ!」

「だめだ、ルカ、呪われるぞ」

いつの間にかルカのとなりに来ていたガブが、

マノンにつかみかかろうとするルカを止めた。

「は、なせ、よ。呪いなんかあるわけないだろ」

「あいつのうわさは知ってるだろ、マズいって」

「うるせえ!」

 

バシっとガブをふりはらい、マノンにあと一歩のところまで迫ったルカ。

しかしマノンがポケットから取り出したものを見て体が固まってしまった。

 

「な!?」おどろくルカ。

 

マノンが取り出したもの――それはゴツゴツした石とコショウビンだった。

 

ルカの心臓が、一瞬遅れて鼓動した。

 

目と目が合う。マノンの真剣なまなざしがルカの頭をまっしろにさせる。

 

「よし戦争だ、かかってこい! 

おまえの目をえぐってコイのエサにしてやる!」マノンが襲いかかってくる!

 

言葉を失ったルカの腕をガブがつかんだ。

「やばいって、逃げよう!」

 

あわてて背を向けて走り出すふたりにマノンが叫んだ。

「待てよ、返すもんがあるだろ? 戻ってこい!」

 

「……」

「……」

 

戻ってきたルカとガブは、ピエールとマノンの前に立った。

「ピエールにあやまって」マノンがどなる。

「ご、ぁ……」

ルカはのどから声を出そうとしたが、うまく出すことができなかった。

どうしておれがあやまらないといけないんだよ!

ルカの心はいらだった。

 

そして――ぼふ!

「うぇっ!?」

「ば~か! ざまーみろ」

 

ルカはマノンの顔にぬいぐるみを投げつけると、ガブと一緒に走り去っていった。

ファインティング・ドリーを借りてみた。記憶障害のドリーが健気すぎて

いっくん日記

始めに。

ネタバレはあらすじ程度なので読んでも大丈夫な内容だと思いますが、

自己責任でお願い致します。

 

みなさんこんにちは(^^♪ いっくんです。

 

今回、久々に映画を見なさいアンテナがピンと立ったので、

ゲオに行ってみました。

 

このアンテナ、たまに立つのですが見たほうがいい映画がある時に急に立って

普段映画を見ない私の頭に情報を流し込んでくれるんです。

 

こういう直感が働いた時には従います。そのほうが良い結果が待っているので。

 

いつか働いたときも『ハリーポッターと死の秘宝パート2』のちょうど

レンタル開始日だったので、本当にこの謎能力は重宝しております。

 

もう『ラベンダーさん』とかヘミシンクでいろいろ体験しているので、

こういうのも誰か上のヒトが教えてくれているんだろうなと勝手に解釈。

 

ゲオへ行ってみると、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が。

 

しかし、もう一歩奥へ進むと『ファインティング・ドリー』。

 

一瞬の攻防が頭の中で繰り広げられ、ファインティング・ドリー』を持って

レジへ。

 

見た感想

 

もうぼっこぼこになぐられた。

 

ラッシュ!ラッシュ!小学生時代に経験した母親の不倫相手からのえげつない

大人の連続パンチのごとく、視聴する私を容赦なくなぐってくる!

 

「ピクサぁぁぁぁぁ! これがお前らのやり方かァァァァ!」

(おかずクラブ風)

 

だってね、始まって早々に子供ドリーがご両親との会話で

「わたしまた忘れちゃったの?」

「忘れちゃってごめんなさい」

「ああ、また忘れちゃった」

と忘れてしまうことをひどく想い詰めるシーンがあって。

 

そして両親とはぐれてからもドリーは記憶障害者として描かれているんです。

 

「わたしドリー。迷子なんです。助けてください」

迷子になってしまった子供ドリーに救いの手を差し伸べる夫婦の魚。

しかし子供ドリーは、いま自分が言ったことさえもすぐに忘れてしまうのです。

「わたしドリー。迷子なんです。助けてください」

「ええ、それはもう聞いたわ」と呆れられてしまう。(泣ドリー・・・)

夫婦の魚は迷子の子供ドリーをどうしたらいいか相談していると

子供ドリーから「探しているの」と言われ、困ってしまう。

誰を探しているのと聞くが返ってきたのは「誰か」という返事。

誰かでは探しようがない。子供ドリーは両親のことも忘れてしまったのです。

 

そしてドリーは子供ながらに

 

海の大人たち(魚や貝)に「探しているの! だれか!!」

 

と訊いて回りました。知らない大人に話しかけるのは子供にとっては

かなり勇気のある行動です。大試練です。

 

 

聞いたことも、自分が今何をしているのか、何を言ったのか、

どこへ向かっているのかもすぐに忘れて分からなくなってしまうのに。。。

 

 

何をしているのか、今何をしているのか、う~mmと唸り、悩み、もだえ

海を旅し、そして大人になっていったのです。

 

マーリン(ニモの父)と出会った頃にはもう自分が何をしているのかも

分からなくっていたのではないでしょうか。

 

この作品では、『ファインティング・ニモ』の時とはちがった視点で

ドリーを表現しています。

 

『ファインティング・ニモ』の時にはそういうキャラクター。

忘れんぼうという個性として描かれていました。

 

しかし今作品『ファインティング・ドリー』では

記憶障害を持った女の子としての面をかなり強調しているんです。

 

自分が今何をしているのか。大事なことは忘れて

興味を引かれたものに気を取られ、ついおしゃべりしてしまい、

いま集中すべきことを見失ってしまう。

 

 

これはどの映画にも言えることですが、

ことさらこの映画は鑑賞するのが子供と大人で見方がまったく変わると思います。

できることなら私も、子供の頃に見て、大人になってもう一度見たかったです。

 

ピクサー映画の構成や見せ方は本当に上手い。

創作家としても勉強させられます。

 

ドリーがたっくさんの苦労と後悔の冒険のあとに

両親と出会う。

 

そのシーンで涙がぼっろぼろ出るわ出るわ(どうだ嬉しいかピクサー!!)。

 

映画で泣いたのは初めてです。

 

子供と、大人が、抱きしめ合い、言葉を交わす。

もう単純にそれだけで私は泣いてしまうのです。

 

ドリぃぃぃぃぃ。

 

そしていろいろあって無事ハッピーエンドとなるわけです。

 

この映画の魅力をいっそう輝かせる仲間を紹介

 

白イルカのベイリー! エコロケーションという能力で遠く離れた空間を感知!

 

ディスティニー! ジンベイザメの女の子! いっくんの好み!

 

ハンク! このタコ野郎! イカしてるぜ! 今作のキーキャラクター!

 

マーリン! 今回もヘマっちまったぜ!

 

おなじみニモ! マーリンが言った余計なことをソックリそのまま呟いては

マーリンのことをちくちく責めるぜ!

 

 

感動だけでは終わらせないのがピクサーの良いところ。

この映画で一番おいしいところは一番最後に凝縮されていました。

スタッフロールが終わった後にまさか。まさか。。。

ピクサー至上最高傑作だといえるオチ(いっくんの意見です)。

こんなに秀逸なオチは見たことがありません。

一作目から13年という期間を経ていることも、

そう感じさせる要因かもしれません。

 

「このオチは映画を見てご確認ください」という常套句をもって、

締めたいと思います。

 

最後に。

ピクサーさん、こんなにステキな映画を作ってくれてありがとう!!

素晴らしかった!! うん!

これからも楽しみにしています!

(*´ω`*)

第3輪 マノン・ガトフォセ

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国

そろそろ帰ってくる頃だな

 

      ――ガトフォセ

 

 

 

黄金の葉っぱが目立ってきた11月。

都会の中とは思えないほど木が生いしげる自然公園の中を、

走っていく3人の少年たちがいた。

急な大声に驚いたカモたちが水面から飛び立っていった。

 

「は、は、返してよ!」

「ほーらこっちだ。投げるぞガブ」

「うわ」投げられた何かを、ガブと呼ばれた少年は

落としそうになりながらもキャッチした。

「あーやばい、来るぞ!」

 

ふたりの少年が何かを投げ合っている。

 

「ねえ、返してってば」

いかにも気弱そうな少年が言った。

 

「フー! 返してほしけりゃ20フランよこしな」

「おいガブ、そんな汚いぬいぐるみに20フランの価値もねえよ」

「だ、だまれ! おばあちゃんが作ってくれたものを悪く言うな」

 

「なんだピエール、文句でもあるのか?

しょうがない、お友達割引で10フランにまけてやろう」

「あっはっはっはっは! ルカはやさしいな」

 

ルカ・ミィシェーレ。ガブリエル・ベフトォン。

どちらも学校では名の知れた悪ガキだ。

 

「ねえ、返してよ!」

「返してほしかったら力ずくで奪ってみたらどうだ?

ぬいぐるみが大好きなお嬢ちゃん」ルカはあざけった。

 

ピエールはルカにつかみかかろうとしたが、バチンと顔をはじかれて

尻もちをついた。

 

「おいルカ、やりすぎだ! なにもそこまですることはないじゃないか!」

急いで近づいてきたガブがピエールに手を差し出した。

「悪かった、ちょっとふざけただけなんだ。ごめん」

「うん、いいよ」

 

しかしピエールが安心して手をつかむと、

ガブは思いっきり力を入れて180度反転!

ピエールは投げ飛ばされてしまった。

「うッ!」

 

「「あっはっはっはっは!」」

 

大笑いするイジメっ子ふたりを見て、ピエールは痛みと恥ずかしさ、くやしさの

あまり涙を流した。心がズキズキ痛んだ。

「くそう」

 

そんな時。

 

「マノン・キャノン!」  

 

 「ゲァ!?」

 

とつぜん前に倒れたルカに驚くガブ。

 

ガブのとなり、さっきまでルカがいた場所には

赤髪の女の子が立っていた。

第2輪 ラベンダーさんとオレンジくん2

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国


「いってぇな!」

 

呼吸が止まりそうになるぐらいの痛みに頭を押さえながら上を見上げると、

 

そこにはスーツを着た中年の男性が立っていた。

 

彼は一見するとサラリーマンにも見えるが、眉間に刻まれた深いシワからは

 

職人気質な頑固さがうかがえた。

 

近よりがたい雰囲気もあるが、顔にかけている丸メガネがとてもおちゃめで、

 

親しみやすい印象を与えている。頭に関しては、ノーコメントだ。

 

「何をしてるんだふたりとも」

 

男性は険しい声音でそう言うと、しゃがんで目線をオレらに合わてきた。

 

上から頭ごなしに説教するのではなく、何があったのか、

 

ちゃんと聴こうというのだ。

 

長いこと人間を見てきたが、人の話に耳を傾けられる人間は

 

総じて賢いやつが多いよなぁ、とオレがひとり感心していると、

 

横からプンスカと文句を言う声が聞こえてきた。

 

「ちょっとガトフォセ! なんで私までぶつのよ」

 

見ると、ふくれっ面のラベンダーがガトフォセに不満をぶつけていた。

 

(ざまあみろ)

 

ガトフォセは困ったように笑うと、首を振り、ラベンダーに向き直る。

 

「ラベンダーさん、ここには薬品や、お客様に届ける精油があるんだから、

 

遊んだらダメっていつも言ってるでしょ」

 

「私、遊んでなんかいないわ」下品な小娘は胸を張り、堂々と言い訳し始めた。

 

「オレンジがいきなり追いかけてきたから、逃げただけよ」

 

その言葉を聞き、オレは目を見開いた。

 

「こら、オレンジ! いきなりヒトを追いかけるなんて悪趣味だぞ」

 

ガトフォセの予想外の言葉に少なからずショックを受けながら、

 

「いや、ちがう、オレじゃ……ちがう」否定したオレは、

 

ガトフォセのニヤけた目から、こちらの反応を楽しんでいるのだと理解すると、

 

横に残ったわずかな髪を引っつかんでやった。「こらオッサン」

 

「オレンジ!」ガトフォセが叫んだ。

 

ビクッと身体がすくむ。急に大声を出されてドキドキ驚いていると、

 

「ゴメンナサイ、手を離してください」と、

 

大の大人とは思えない情けない声が聞こえてきたので、離してやった。

 

「ま、どうせラベンダーさんが悪いんでしょ?」

 

ひとつせき払いをして、姿勢を正したガトフォセがそう言うと、

 

小娘はご立腹といった様子で暴れだした。

 

「決めつけるのはよくないわ! ちゃんと話を聞きなさいよ」

 

ガトフォセのしかたないという表情を見て、オレはことの顛末を話した。

 

「ふむ。つまり、けっきょくラベンダーさんが悪いんだよね?」

 

「ち、ちがうもん」

 

一気に立場の悪くなったラベンダーに、「いー、ざまあみろ」と言ってやった。

 

オレはぐ~っとわざとらしく背伸びすると、「さて、もうひと眠りするかな~」

 

ふたりに背を向けて歩き出した。

 

勝利の雄たけびを内心であげながら、戦場から凱旋し、

 

パレードに参加している将軍のような心持ちで階段をのぼり始める。

 

だがしかし、オレを待っていたのはクーデター後の新政権だった。

 

「あいつが、ナンパしてたのが悪いんだもん」

 

銃を構えられたように、オレさまの動きはピタリと止まってしまった。

 

「さっきオレンジは、部屋で寝ていたところをバカにされたから

 

追いかけたって言ってたけど、私がバカにしたのは、

 

仕事をさぼって女の子をナンパしていたからよ」

 

ラベンダーめ、この期におよんで往生ぎわの悪いヤツだ。

 

「だから、それは彼女の心の状態があまりにも不安定だったから。

しかたないだろ」

 

オレたち精霊は、人間の精神状態にとても敏感だ。

 

昼間の女の子に関しちゃあいつも、

 

オレがウソを言っていないということはわかっているだろう。

 

(……きっと。なぜこうも自信がないのかというと、
このラベンダーという女、頭が少々……)

 

じゃあな、と手を振りおさらばしようとしたが、ラベンダーの追撃はやまなかった。

 

「じゃあ、その前に話しかけた8人の女の子たちもみんな、

不安定な状態だったわけね」

 

パンッと勢いよく飛び出した弾丸がオレの脚を撃ち抜いた。ぐふっ。
これはマズい!

 

(キミたちが何を言いたいのかはわかる。
でも言い訳をさせてくれ。こうは考えられないか?
その日たまたま、精神的にとても病んでいる女の子たちと、
たった数時間のうちにぶっ続けに出会ってしまったと)

 

「オレンジ、これはどういうことだい」

 

ガトフォセが怪訝な顔でこちらを見てくる。

 

オレは、しらりとイヤな汗が首筋を流れるのを感じた。

 

――まさか、今朝からずっとオレの後をつけていたのか!?

 

「ま、まってくれ、誤解だ! ちゃんとパトロールもしていたさ! 

変な疫病がうろついてないかとか、さ」

 

必死に弁解したが、ラベンダーの辛辣な言葉の銃弾がさらにオレを襲う。

 

「変な疫病はおまえだよ」

 

悪意とトゲがびっしり生えたムチで、

 

オレは縛り上げられたように動けなくなってしまった。

 

「香りを使って女の子を誘惑してお茶なんかして、

ずいぶんお楽しみだったじゃない

服務規程違反で上に報告してやる」

 

完全に立場が逆転したラベンダーは、まるで革命家のように力強く叫びをあげ、

 

オレさまのとても健全な心

 

(人によっては、腐った性根と言うやつもいるかもしれない)

に剣を突きたてた。

 

「これでもし本物の疫病をみのがしていたら、
真っ先にペストのエサにしてやるからな」

 

――ペスト

 

その言葉を聞いて背筋がゾクッとした。

 

かつて幾度となく人類を苦しめてきた、疫病の名だ。

 

医療が少しは発達し、人々はずいぶんと平和に暮らせるようになった。

 

だからなのか、オレは……。少し、気がゆるんでいたのかもしれないな。

 

オレは自分のおこないを恥じた。悔やんだ。それゆえに、すなおに謝ることにした。

 

「もうしわけなかった」

 

少しの間をおいて、ガトフォセが「頭を上げなさい」と、うながしてくる。

 

仲なおりの握手をしようというのだ。いくつだよと思うが、

 

ラベンダーのほうは手をのばしてくる。

 

オレは、2階の部屋でバカにされていた時とは別の恥ずかしさに

 

顔を赤くしてとまどっていると、ラベンダーが手をつかんできた。

 

そっぽを向きながらも、それでいてしっかり握るので、

 

こちらもしっかりと握り返した。

 

仲なおりの握手を交わしたふたりを見て、

 

ガトフォセは子供の成長を見守る親のように微笑んだ。

 

ガトフォセが満足気にうなずいていると、

 

「ああそうだ」思い出したようにオレンジが言った。

 

「ひとつ、訂正しておきたいことがある」

 

なによ? とラベンダーに視線で問われたので、オレンジは答えた。

 

「7人だ」

 

「は?」

何のことかわからず間の抜けた顔をしたラベンダーとガトフォセに、

 

オレンジは説明するように続けた。

 

「ナンパしたのは9人じゃなくて、7人だ」

 

オレンジの要求は、巡回中にナンパをしていたのは確かに悪かったが、

 

1日ナンパは7人までの掟(オレンジの自分ルール)は守っていたので、

 

数字を盛ったことに対して謝ってほしいというものだった。

 

このメチャクチャな言い分についに、ラベンダーの堪忍袋の緒が切れる。

 

うつむきながら拳をわなわなと震わせ、う~とうなると、怒りを大爆発させた。

 

「そんなこと知るかああああああ」

 

噴火みたいな勢いでオレンジの顔面に拳がめりこんだ。

 

ゴッという硬い音が響き、オレンジの体は壁まで飛んでいく。

 

「ぐへッ!」
 
のびたオレンジを哀れみながら、濃いめのコーヒーを静かにすすると、

 

ガトフォセは、誰にともなくそっと告げた。

 

「ああ、今日はいい天気だな」

 

大混乱の時代に差した一時の光に、


ガトフォセは少しだけ心をなごませる。

 

しかし彼のつぶやいた味のある深い声が、オレンジに届くことはなかった。

休日のミルラさん ハワイ編1

ワンシーン小説(長い文章が苦手で雰囲気だけ楽しみたい方はこちら)

ミルラさんは、だらーっと、していた。

 

何十年ぶりの休日だろうか。。。

 

肉体を持たない霊は人間よりかは丈夫だし元気だが、

とはいえ休みは欲しい。

 

地球を守る立場のくせに休んでいるヒマがあるのかよ、とかネットで書くヒトが

絶対いるだろうなと思いながら、だら~っとしていた。

 

たたみの上、バランスボールに腰をのせて仰向けになったミルラさんは、

反転した世界をぼんやりながめていた。

 

――休日って何したらいいんだろう?

 

ミルラさんは頭の中でやることリストを思い浮かべる。

 

シナモンを怒鳴りつける。

各異世界の管理者に文明の進捗状況を確認する。

オリバナムへの報告。

アカデミー業務。

『日の昇る評議会』に提出する資料作成。

あとなんだっけ。。。人魚会の会合に出席。

富士神界に出張するのと、UFO FOR YOU部の新型UFOの試乗。

 

――ってちがう!!

 

これは仕事じゃないか!

 

休日にすることだ!

 

休日にすること、いっぱいあるだろう。

 

……たとえば…………――海をながめる。

 

いやちがうな。寂しすぎる。海なんか眺めてどうするんだ。

なんの生産性もないじゃないか。

いや、そもそも休日に生産性を求めることって間違いじゃないのか?

 

理想の休日の過ごし方ってなんだ?

ミルラさんは気づいた。

みんなはどうやって休日を過ごしているんだ?

 

シナモンだったらOBAKE、オリバナムだったら……そういえばオリバナムの

趣味ってなんだろう? ……結界のプログラミングが趣味だって昔言ってたな。

あいつも意外とオタクだな。

 

サンダーだったら座禅とか瞑想かなぁ。サンダーはしっかりしているからな。

 

(最近はゲームだな by サンダルウッド)

 

ミンテとカモミールは多趣味でうらやましい。

 

私なんて創作ミイラの開発ぐらいしか興味がないからな。

でもそれは仕事の合間に割とやっているから……。

じゃあもう何したらいいんだ~~~。

 

そして2時間だらだらとバランスボールを蹴ったり抱いたりして

悩んだあげく、ついにミルラさんの頭にひらめきが降りてきた。

 

――そうだ! ハワイにパンケーキ食いに行こう

 

 

第1輪 ラベンダーさんとオレンジくん1

ラベンダーさんと黄金のリンゴⅠ サンタの国


『黄金のリンゴ』はいいよな。
きっと女にモテまくりなんだろうぜ

     ――オレンジ

 

人ごみあふれる街の中――笑い声やお店の売りこみに混じって

 

かすかにすすり泣くような、声にもならない音がありました。

 

「おねえさん、どうして泣いてるの」

 

一瞬ビクッと震えたあと、そっと顔を上げると

 

そこには太陽のように明るい小年がいました。

 

ぽけっとした顔でたたずんでいると、少年は手を握り、やさしく笑いました。

 

「おねえさんがそんなだと、オレまで悲しくなっちゃうよ。

 

ほら、笑ってるほうがずっとかわいいよ? 元気だして!」

 

少年の手から伝わってくる不思議なあたたかさが胸に染みこみ

 

どろどろとした何かを溶かしていくようでした。

 

何が起こったのか理解しようとした時には、少年の手はもう離れていました。

 

「それじゃ、もう行くね」

 

バイバーイと手を振り去っていく少年に

 

ハッとした女性はあわてて声をしぼり出します。

 

すると、少年は足を止め、振り返って言いました。

 

「オレンジ・スイート」


*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ


「うっわキモッ!」

 

ゲラゲラと笑う少女に、太陽のように顔を真っ赤にしたオレンジは

こぶしを震わせていた。かんべんしてくれ。

 

さかのぼること数分前――

 

 

年季の入った木の香りがする一室で、オレは横になっていた。

 

今日みたいなカラッとした空気は大好きだ。とてもすごしやすい。

 

窓から差しこむ陽の光も歌っているようで、とても心地いい。

 

もう11月だってのにフランスらしい、いい日だ。

 

ついこないだ世界大戦が起こったり

 

先月ニューヨークのウォール街で株価大暴落があったり

 

これから世界恐慌が始まるなんて思えないよな。

 

気持ちよくまどろんできたところでドタバタと

 

階段を駆け上がってくる下品な音が聞こえてきた。

 

オレは相手が誰だかわかっていた。

 

――寝かせてくれよ。いや、もう無視して寝よう

 

チャダッと勢いよくドアが開かれ、数瞬。

 

どうやらそのまま動きを止めたらしい。

 

よし、そのまま帰ってくれ。オレが泥になった意識で思っていると。

 

「オレンジ・スイート」バッと振り返りポーズを決めた少女は、

 

ゲラゲラと笑い出したのだった。

 

深淵の底へ落ちかけていた意識が一瞬でかくせいする。

 

ふがっ、と情けなくのどを鳴らしてゲホゲホむせていると

 

オレのことを蔑む目で見下ろしてくる少女が目に入った。

 

「こっれ恥ずっ、これはないわ!」

 

腕をわさわさとさすりながら顔を赤らめている少女は、すごく楽しそうだった。

 

バカにされているオレとしては、シャクに触ることこの上ないが。

「な、なぜ知ってる!?」
そう問いかけると、少女はすずしげに「見てたから」と返した。

 

「そうじゃなくて、今日はドヌーヴのばあさんに
精油を届けるんじゃなかったか?」

 

「用事で出かけてるって小鳥たちが言ってたから、明日いく」

 

それで暇になって街を歩いていたら、オレさまがいたので後をつけていたらしい。

 

「ストーカーだぞ!」言い返すと

 

あわい紫色の髪の小娘は、やれやれとシニカルな笑みを浮かべた。

 

「昼間っから女ナンパしてるやつが、よく言うわ」

 

「あれはパトロール! 人々を助けるのが精霊の仕事だろ!」

 

「オレンジ・スイート」少女はバッとポーズを決めた。

「そのポーズやめろ」
「うっわキモッ! アハハハハ! これヤバいんだけど!」

 

(一応、オレさまの名誉のために言っておくが、小娘はかなり誇張して
ポーズを決めている。そんなよれよれのポテトみたいなポーズはしていない。
あのときオレは、ゴッホが描いた7番目の【ひまわり】のように、
どこか憂いをただよわせながらも情熱的で気品のあるポーズを取っていた。
まあ、はたから見れば少々こっけいだったかもしれない)

 

――っ、っ、っ、この! この野郎! この野郎この野郎この野郎!!

 

頭に血がのぼっているオレの様子を見てひとしきり笑うと

 

少女は満足したのか、呼吸を整え始める。

 

これで開放されると安心したオレは、しかし次の少女の言葉に
目を見開くのだった。

 

「ふん、パトロールなんて物は言いようね。ガトフォセにチクッてやるわ」

 

言うが早いか部屋から飛び出していく少女。

 

慌てて手を伸ばすが少女には届かず、オレは空まわって態勢を崩してしまった。

 

一階から「あはははは」という笑い声が聞こえ、必死で態勢を立て直す。

 

「おい待て、ラベンダァァァァァ!」

 

叫びながら急いで階段を駆け下り、なんとか追いついて捕まえようとしたが

 

あと1歩のところでラベンダーは、柱の影に身を隠した。

 

柱をへだてて対面したふたり。

 

オレは汗だくだくと息を切らしていたが、
ラベンダーのほうは澄ました顔でクスクスと笑っていた。

 

「ずいぶんとお疲れみたいね」
「〈ダレカさん〉のおかげでな!」

 

(〈ダレカさん〉というのは、OBAKEの一種。
世界中で起こる、ありとあらゆるできごとに関わっているらしい。
なんでもウワサによると美人だとか。もし会えたらナンパしてみようと思う)

 

右へ顔を出せば左へ、左へ顔を出せば右へ移動するラベンダー。

 

なかなかすばしっこくて捕まらない。

 

疲れているせいもあるだろうが、
全力で動いているのにこうも捕まえられない自分は
ふがいないのだろうか。

 

そう考えていると、突然ラベンダーの動きが止まった。

 

余裕たっぷりの顔から察するに、疲れたからというわけではなさそうだ。

 

「オレンジ・スイート」バッ
「やめろォ!」

 

――しかもさっきとポーズがちげえじゃねえか! 
そんなヒーローの必殺技みてえなポーズしてねえよ!

 

そうつっこんでいると、頭にゴンと衝撃が走った。

 

「がっあ!?」

 

「何をしてるんだふたりとも」

 

見上げると、ハゲたおっさんがいた。