読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

子猫ちゃんの恋 

ほんとうは4話ぐらいに分けて書こうとおもったんだけど、
思ったよりいまの自分に体力がなくて、ささっと書いてしまうことを
どうか許してほしい。

子猫ちゃんといえば、我が教室の女王様である。
春休みが開ければ中学一年生。
先週の戸外活動で行った公園の小さな滑り台で大興奮。
精神年齢は小学三年生ぐらい。
言葉を読むのは難しいけど、聞くことのほうが上手。
人とのコミュニケーションはとれるし、
そこら辺のモデルよりもキレイなので、
本人の頑張り次第ではモデルやアイドルの夢も
叶うのではないかと思う。叶えさせてあげたいよほんとう。

うちの教室にはフーちゃんというコミュニケーションがとるのが難しく、他の子といるとパニックを起こしやすい中学一年生の子がいるのだが、そのフーちゃんには女の子の髪をひっぱるという癖がある。しかもそれは、首がカクンとなるぐらいの強さだ。

このまえも小学一年生の妖精ちゃんはトイレのすれ違いざまに二回もひっぱられ、トラウマになっている。

先週そのフーちゃんに髪をひっぱられて、子猫ちゃんは恐怖のあまり泣いてしまった。フーちゃんに悪気はなかったんだけど、この一件で子猫ちゃんの中で敵としてフーちゃんは認識されてしまった。フーちゃんは遊びたかったか、髪に興味があったからか、なんだろう? 本人がしゃべれたら理由を聞けるんだけど……。

子猫ちゃんは衝動性はないけど、よくやりかえさずに我慢していたと思う。
ぼくが小学生だったら顔面に何度もオラオラ(ジョジョより)してた。

それをなぐさめてあげたのがきっかけかな。
ぼくと子猫ちゃんの信頼関係がぎゅっと結ばれ、腕に抱きついてくる頻度が高くなってしまった。

正直かわいい子に甘えられると悪い気はしないケド、
わたしは対応に困ってしまった。
年頃の女の子だし、男性との距離感を教えないといけないけど、
う~ん、子猫ちゃんはなんて思うかな。
好きな相手から拒絶されたって傷ついたりするのかな。
下手な言い方ができないのだ。
ぼくに抱きついてきたり、毛布の中でふたりだけの内緒話を打ち明けてくれる彼女の顔は、猫のように無邪気で、お母さんにも秘密の宝物を発見したみたいで、幸福そうで……。恋の顔になっている。他の人にはツンのくせになぁ。
でもそんな彼女と秘密を共有していると、ぼくも、学生時代に戻ったような、
そんな気分になる。先生や大人には内緒の、仲間だけとの秘密。
彼女といると、忘れてしまった純粋なあの童心が、
ぼくの中の深いところからよみがえってくる。

だから距離感の注意も、
中身が見えないぐらい緩衝材や包装紙で包んだ言い方にぼくはなっている。
いまは他のスタッフが注意してくれてすごい助かってる。

昼食後のゆっくりタイムで、
「こっち来て、一緒に寝よ」なんて言われると、ぼくも人だから嬉しく思ってしまう。でも、ぼくとしては、その感情を糧に成長できるよう
うまいこと持っていきたい。

↑の発言は完全にアウトですね。
ちなみに子供たちは基本的にブラックな遊びが大好きで
(わるいことといいことの区別はできている)
いま流行っている遊びは不審者ごっこ。
ぼくが脚と顔に動物の仮面をいくつもつけて、サングラスをかけたりして、
子供たちが持っているお気に入りの人形を持っていく遊び。
ぼく「さて、今日も不審者になるか、はぁ」
同僚「その発言もどうかと思うよ(笑)」

ぼく「コドモ、ダイスキ、オトモダチニナロウ――ゥアァアァアア!!」
子供たち「「「キャアァァァァアアアアアァ」」」

数分後
子供「ねえ、いま不審者きた!」
子供2「タヤノンでしょ!」
ぼく「え? なんかあったの? いま事務室で仕事してたんだけど?」
子供3「靴下の色でわかったよ、タヤノン逮捕ぉぉぉ!」

こいつらクソかわいいな。

さて本題に戻ろう。

子猫ちゃんはふたりだけの秘密と言ってはぼくにいろんな話をしてくれた。
つい三日前も教室内で、ぼくたちはくるくる回っていた。
イメージは美女と野獣がホールの中でワルツをおどるように。
子猫ちゃんに手をつかまれて、子猫ちゃんのリードに合わせて、
ぼくらはくるくる回りながらおしゃべりしていた。
かなりドラマチックな空気が流れていた。
目がキラキラしてんなぁ……。
「タヤノンあのね、中学の制服かわいいから、タヤノンだけに見せてあげる」
かなり要約すると、彼女の話はこういう内容だった。
いや、学校終わってこの教室に来たら、バレるけどね(笑)

中学校生活――彼女の世界が一気に広がり、快晴のように見晴らしがよくなる。
かわいいんだから、いろんな恋をして、成長してほしい。

有名ピアニストの言葉だけど、
女は男を知って成長する。男は女を知ってダメになるそうだ。
だいたいはその通りだと思う。

昨日の昼食後の毛布の中で。
「ねえ、この前タヤノンだけに作ってあげるって言ったアメリカのアクセサリーさ、
まだできてないの、ゴメンね」
「いいよ、ゆっくりで。気持ちだけでもすごく嬉しいよ」
彼女の息が顔にかかる。
見つめ合ってると、なんだか地球じゃない、他の世界にいるみたい。
もしかしたら他の次元かも。

やがてぼくは毛布から抜け出し、立ちあがる。隣で子猫が毛布から顔を出した。
背後の窓から見える外は、車が絶えることなく人を乗せ、動き回り、
教室内では小さな巨人どもが今日も戦争している。
目と頭と心で、観察しなければ。
事故がないのが一番。
あったらあったで成長できる。
やってはいけないことを学べる。

どう転がっても、自分の気分でその日は
HAPPYにもBADにもなるように地球――日本はまだできている。

ぼくも、どれだけ遠くまで見えるようになるかな。

足元で声が聞こえた。
「タヤノン、大好き」
くすっと笑ってしまった。ぼくは恥ずかしくなり、一度教室内を見渡した後、
もう一度彼女に顔を向ける。

「ぼくも大好き」
「ありがとう!」

あんまり大人をからかわないでよ。
足元のきみのことも、ちゃんと見てるからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと余韻ぶっこわすようで悪いけど、ぼくを取り合って赤オニちゃんと無言で
視線でケンカするのは、男性のぼくとしては怖いからやめてほしい。
ま、しょうがないか。
女の子ってそういうもんだもんね。