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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第5輪 マノン・ガトフォセ3

怒って石を投げる少女

「あいっつら」

マノンはプロ野球選手のように美しいフォームを決めると、ビュンっと

握っていた石を投げた。

 

「うわ!?」ルカは動揺した。

「わ!」ガブもおどろく。

 

「ちっ」

 

石はルカの髪をかすめただけで当たることはなかったが、ふたりを怖がらせることは

できた。

ルカは振り返って大声を出した。

「ばーかばーか、へたくそ! 男女!」

 

マノンが怒ってこぶしを振り上げると、ルカとガブリエルは急いで去っていった。

 

「なんなのあれは! ほんっと子供ね」そしてピエールを見る。

「え、えっと、マノン、助けてくれてありがとう」

弱々しい声を出すピエールにマノンは少しイラついた。

 

ピエールがマノンをちらりと見ると、

赤い髪のせいで怒りで頭が燃えているように見える。

それがよけいに怖さを倍増させた。

 

学校の先生、または親のようなかしこまった声でマノンはしゃべった。

「ピエール、あなたは毎度毎度イジめられてはずかしくないの!?」

返す言葉もなかった。

「ごもっともです」

「男の子でしょ! やられたらやりかえさなきゃ。

いつまでたってもイジめられるのよ」

「ぼくが女の子で、きみが男の子ならよかったのにね」

「そういう問題じゃないでしょ!! あなたって本当に――」

 

また始まったとピエールは思った。

助けられたあとに始まるお説教タイムだ。

あーでもないこーでもない、とウダウダ言われるのは苦痛だった。

ピエールはたまにこう思う。

イジめられているほうが楽かも。

 

そう思った瞬間、マノンは顔をゆがめた。

「そんな考えだからイジめられるのよ!」

「え?」

一瞬しまったという顔をしたあと、

マノンはそっぽを向いてもう知らないとばかりに歩き出した。

 

「じゃーね。もう次イジめられても自分でなんとかして」

「まって、ゴメン、次はなんとか自分で解決できるようにするよ」

「はいはい、聞き飽きた」

 

マノンはおせっかいな自分に嫌気がさしていた。

正義感が強いのって、疲れる。イジメっ子はなんであんなに楽しそうなのかな。

わたしもそっちがよかった。

それにしても、ピエールだけで今月は6回も助けているような……

そのことに気づいた時、イラっとした。

「もう! 男なんだから本当にしっかりしなさいよ。いいかげんにしないと

わたしがイジめるわよ!」

「ひゃ!?」

そう言ってマノンはピエールにぬいぐるみを投げつけた。そして帰ろうとしたが――

「あ、それ」

 

マノンはピエールの腕がすりむけていることに気づいた。