読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

子猫ちゃん「あたし大火ヤダ! 嫌い!!!」 いっくん「」

今日は、治安があまりよくなかった。

大火くんが来たからだ。

大火くんは暴れん坊の小学5年生で、

物を壊す、他の児童の遊んでいるところに突っ込んで

オモチャをめちゃくちゃにする。

大人に叱られてもそれすら駆け引きのように楽しむ、

施設一番の問題児だ。

女性のスタッフは特にナメきっており、叱られたら顔にツバを吐いたりする。

 

一番すごかったのは、あれだ。

マンションの待合室のソファの上に土足で乗っかり、散々跳ねまわって

「捕まえてごらーん(笑)」と先輩スタッフの女性を挑発していたところを

管理人に視られ、施設の責任者が呼び出されて雷を落とされたことだ。

 

ぼくはそのことをあとから聞いたが、

ある日マンションの1階からエレベーターに乗るまでに

「おい管理人! 出て来いよ! 俺のことを怒ってみやがれ」

とまあまあ叫んだので、

腕をつかんでいるぼくとしては冷や汗が止まらない。

 

でもこういう子ほど大人になった時しっかりしていたりするので、

そこだけは大火くんに希望を持っている。

 

事務所に入ってはいけないと分かっていて入るので、

3週間前に大火くんのことを人生で一番キツい声でキツくキツく叱ったら、

微妙に少しだけいっくんの言うことを聞くようになった。

 

その件は、スマイルくんというよく笑う子がいるのだが、

彼の人生の中で一番面白かったらしい。

3週間前から現在進行形でずっと会うたび会うたび、

「いっくんさ、大火くんのこと怒ったでしょ、あれ面白かった」

と言ってくる。

今日もスマイルくんを学校に迎えに行ったとき、

「いっくんさ、大火くん怒っているときの声がおじさんに似てたw」

と言っていた。なーに言ってんだか(照)

 

スマイルくんは施設でポケモンの本か東京超詳細地図を

ずっとひとりで読んでいるので、

ぼくとスマイルくんの会話は、「大火くん怒ったwアハハ」

の話題で終わるのだ。不思議なぼくら。

 

ぼくが大火くんを難しいと思うところは、

ウソつきで信用ができないが、本当のこともたまにちゃんと言うところ。

だから、当たり前だが、大火くんが最初から悪いと決めつけてはいけない。

(悪くなかったことがほとんどないが)

 

でも厄介なのが、大火くんは被害妄想が強く、先述のようにわざとウソを

吐く場合もあるが、ありのまま起こったことを話すことが苦手で、

本人も間違っているという自覚がないまま事実とちがうことを言うので、

大火くんのことを叱るときは、最初から最後まで目を離さず

見ていないと下手に叱れない。

厄介、厄介。

 

今日も6年生の子猫ちゃんが頑張って作ったオモチャのキッチンセットに

並んだ料理の数々を半分ブッ飛ばし、3年生のシャチくんに腹パン

し、さらにヒザでチン蹴りを喰らわせた。

理由を問いただしたら、

大火くん「攻撃してきたから」

シャチくん「攻撃してない、ぶつかっちゃっただけ」

大火くん「でも謝ってない」

シャチくん「ゴメンって言ったじゃん!」

大火くん「聞こえない」

いっくん「どうしてシャチに謝らせようとするの?

大火だってさっきキッチンセットブッ飛ばして

子猫ちゃんに謝んなかったでしょ! それはおかしい」

大火くん「なにが? 俺はおかしいと思わない」

 

(スマイルくんはこのやりとりを見て喜んでいた。本当に)

 

どこかから受けたフラストレーションを、施設の子で発散する傾向が

あるので、いっくんとしては次の大火くんの利用時には。

 

大火くんの理不尽な暴力からみんなを守るため、指導員としての顔を捨て、

完全な警備員として動こうと思う。

いっくんと遊びたいって子たちはいっぱいいるけど、

遊ばない!! いや遊ぶけど。

いっくん担当の児童はちょっと他の人に見てもらって、

いっくんは大火係になる。いっくんが仲良しの子(全員)と遊んでいる隙をついて

大火くんは破壊したり暴力振るってケガさせちゃうんだから。

 

でもいっくんは大火くんとももっと仲良しになりたい。

だってまったく分別のつかない子じゃないし、

元気なのは彼のいいところだから。

ただ、ストレスを他人で発散するというよくない傾向があるだけで。

(なーに、舛添都知事のおっちゃんに比べれば、ちょっとやんちゃな聖人さ)

彼が見ている世界は、赤オニちゃんやブラックくんよりも広いのだ。

だから、この施設では窮屈なんだろうな。

大火くんは悪いところもあるけど、

いいところもあって、えっと、お外だと分別がつくところですね。

あと元気。風の子――いや、嵐の子。

 

あーあ、大火と一緒に外で野球とかサッカーできたらいいのになあ。

あの限りある施設の空間だと、大火もストレスなんだろうな。

ま、社会性を伸ばすという点ではいいんだろうけど。