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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第7輪 オレンジ君のわくわく観光ガイド フランス――リヨン編

 ローマ帝国時代に主演女優をしていたらしいが、 やつの話はウソだと思う

                    

                   ――オレンジ

 

ローヌ川の埠頭の写真

 

頭おかしいんじゃねえの! 怒る意味がわからない。

 

オレは不満だった。ポケットに手をつっこみながら、

ついでにカンを蹴飛ばしたりしてみた。

 

(おちゃめだろ?)

 

今は時間でいうと17時を少しすぎたぐらいか。

帰りの学生やら早く仕事がおわったサラリーマンやらが、バタバタと家に

帰っていた。もっというと、いくつかのカップルがデートしているのを見て

さらに気分が悪くなっていた。

 

見ろよあの幸せそうな顔を!

オレは女の子と楽しくしゃべりながらお茶しただけで殴られたというのに。

カップルはまるで楽園にでもいるような笑顔で楽しくはしゃいでいた。

これから世界恐慌が始まるんだぞ、わかっているのか?

まったくいい歳なんだから、新聞ぐらい読んだらどうだ?

姿が見えないことをいいことにいたずらしてやろうと思ったが、寸前でやめた。

オレもそこまで子供ではない。

 

それに場所が場所だ。

いまオレの目の前を優雅に流れているローヌ川は、

リヨンじゃ人気のデートスポットだ。

せっかくのデートのジャマをしたらしたで、あと味が悪いし、

それになんだかモテないやつの嫉妬みたいでいやだったからだ。

この夕陽に輝くエメラルドグリーンのローヌ川に免じて見のがしてやることにする。

 

 

(かんちがいしないで欲しいが、ぶっちゃけオレさまはモテる。

テクニックもある。今日も7人にナンパして5人の女の子と

カフェでおしゃべりした。

カフェでおしゃべりする時はもちろん周りの人間にオレの姿を見せながら。

そうしないと女の子がひとりでブツブツしゃべっているように見えて、

あとで精神の病気を疑われるからな)

 

 

リヨンは東のローヌ川と西のソーヌ川という川によって

大きく3つのエリアに分けられている。

 

まずひとつめ。ソーヌ川より西の歴史地区。

ここには旧市街があり中世の街並みをそのまま残している。

石だたみの道や旧市街の赤い屋根を丘から見ていると、昔を思い出して

ちょっとなつかしい。

まるで迷路のように細い路地が入り組む旧市街は、どこを歩いても

歴史が語りかけてくるような空気が流れている。

 

フルヴィエール大聖堂というキリスト教の建物もあり、エッフェル塔より高い位置に

あるためオレはフランスで1番高い電波塔と呼んでいる。

それに紀元前1世紀に建てられたローマ劇場まである。

観客1万人を収容できるこの劇場は、いまでもコンサートやオペラに使われている。

 

(ラベンダーが言うには、

ローマ帝国が栄えていた時代にここで主演女優をしていたらしいが、

やつの話はウソだと思う)

 

どうしてローマ劇場があるのかというと、それはリヨンがもともと

ローマ帝国の植民地として作られた街だからだ。

紀元前1世紀にゴール人攻略のために基地が置かれ、やがてローマ帝国の植民地として建設された。その後、歴代の皇帝たちがこの植民地の発展に貢献し、

2世紀にリヨンはローマ帝国の皇帝属州になり、交通や軍事、商売の要所として

ゴール人居住区の中心都市に成長していた。

当時ではけっこう重要な都市だったらしい。

 

いまでこそフランス第ニの商業都市にまでなっているこのリヨンだが、

昔はただの植民地だったってわけだ。

 

(パリが東京みたいに気取っていて、リヨンは大阪みたいに庶民的なイメージ)

 

(なんでオレさまがこんなにリヨンに詳しいのかって?

自分の住んでいる街に詳しいのはあたりまえだろ。

……わかった、本当のことを言うよ。

じつはラベンダーからウンザリするほど聞かされた。

もうローマの話は当分聞きたくない)

 

それから、あー、いろいろあって、いまや美食と絹の街ってわけだ。

 

つまりわかりやすくひとことで言うと、

ヨーロッパでは古都として人気のある観光名所になっているということだ。

 

え? リヨンの残りのふたつのエリアについての説明がまだだって?

物語には尺というものがあってだな……。

それにオレもそれほどリヨンに詳しいわけじゃない。

 

 残りのふたつのエリアは

ソーヌ川とローヌ川の間の半島と、ローヌ川より東にある新市街(ビジネス街)だ。

説明は以上。

 

わかりやすい配置➡ 旧市街 川 半島 川 オレさま 新市街

 

そうそう、もしオレが役人なら半島にあるリヨン市庁舎で働いてみたいと思う。

オレは建築物にはうるさいが、あの建物はなかなかいい。

もしフランスを訪れる機会があったら、一度行ってみてくれ。

 

あと、この物語の中ではガトフォセ香料店は新市街にあると思ってくれ。

 

オレはベンチに座りながら、ひと仕事おわったと背伸びした。