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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第5話 オリエント・アロマ・アカデミー到着

ラベンダーさんと征服の草Ⅰ アトランティスへの不満


 ケメトっていうのは、現代で言うミスル――あー、エジプトのことね。
 黒い土地って意味よ。悪い意味ではなくて、ナイル川が運んでくる、豊かで栄養のある土壌が黒いことから、古代ではケメトと呼ばれていたわ


               
         ――ラベンダー(『ラベンダーさんと黄金のリンゴ』より抜粋)

 

 

 それからもう半月ほど時が流れ、いくつもの町を越え、ナイル川付近の都市をラクダで移動していた時のこと。ミンテとラヴァーレはふたりで仲良く、一頭のラクダをシェアしていた。
 ラヴァーレが、後部に座っている大人ミンテの腕の中で、ウトウトしていると、「着いたよ」という声が聞こえた。
 パチンと何かが割れたように彼女は起き上がると(鼻ちょうちんだと思った人、残念! 女の子はそんなもの出さないわ)、どうやら大きな城壁を前にしていることが分かったが、それよりも目に飛びこんできた光景に、間の抜けた声をあげる。
「え」
 まだ寝ぼけているのかと、目をこすってもう一度見たが、何度見てもその光景が変わることはなかった。
 ラヴァーレが見たもの。それは、巨大な塔だった。
 天を突くほどのそれは巨大な建造物が、大きな城壁を超え、遠くにそびえ立っているのだ。距離はかなり空いていると思うが、それでも、その建造物が信じられないくらい高いことが、見て取れる。

 ――スゴイ! 凄くすごい!! (幼稚な表現かもしれないけど、それぐらいしか言葉が見つからないぐらい、すごいのよ)

 あんなもの、クレッセントの森にもないし、今までの旅でも見たことない!
 ラヴァーレが口を開けて固まっていると、さらに信じられないことが起こる。 ラヴァーレたちが乗っているラクダの前には、中に入るための城門があったのだが、その前に置かれている二体の石像が、なんと話しかけてきたのだ。
「真実の言葉を言え」
「きゃっ」
 ありえないことについ変な声をあげ、後ろに体をそらすとミンテにぶつかった。ミンテは何かを言おうとしていたらしいが、衝撃でウッと息詰まる。
 だがラヴァーレは、おかげでミンテが後ろにいることを思い出し、安心した。
 そしてまた、5メートルはありそうな、椅子に座った姿の二体の巨人の石像が、ギョロリと生き物みたいな目で睨み、話しかけてきた。
「真実の言葉を言え」低く重々しく響く言葉に、ミンテは今度こそ答える。
「アーメン」
 すると、「よかろう。神のしもべよ、通るがよい」という言葉と共に、ゴゴゴと鈍い音を立て、城門が、自動で横にスライドして開いた。
 そのことにも十分驚いたが、門が開くとラヴァーレは、夢でも見ているような、もっともぉ~っと信じられない気分になった。――非科学的だわ。

 ――島が浮いている……

「ありえないわ、こんなこと……ありえない」 ラヴァーレは息をするのを忘れるほど、たじろいでいた。
 何、ここはなんなの!? 遠くに見える塔はえげつないほど高いし、その前には島がふたつ、空に浮いている。石像はしゃべるし、門に関して言えば、勝手に開く。

 ――まるで、昔、本で読んだおとぎの国に、迷いこんじゃったみたい。ありえないわ……

 その様子を察してミンテが、いつもの、いたずらっ子特有の憎めない笑みを送ってきた。
「内心は?」
「すっげーーーーー~っ!!」

 子供みたいに喜んでしまったけど、でもやっぱりおかしい。だって、あんなに高い建物もそうだし、空に島が浮いていたのなら、普通は来るときに気が付くはずだわ。それなのに、まったく気が付かないなんて。もちろんわたしは、少しの間寝ちゃってたけど、そんなに長い間寝てたかしら?
「ミンテ、あんな建物、さっきまでなかったよね」わたしは、遠くのほうにドッシリと構えている建造物を、指さし言った。
 なかなか返事が返って来ないので後ろを振り向くと、ニヤッ面の大人のお姉さんがいた。
 こちらの反応を楽しんでいるのだ!
「いいから早く」
 そう促すと、ミンテはラクダから降りて楽しそうに(ミンテはいつも楽しそうだが)、いつものミンテ劇場で説明してくれた。
「オリエント・アロマ・アカデミーへようこそ、麗しきお嬢さん。ワタクシ、ガイドのミンテは、三ヵ月にもわたる長い間、このツアーをお供させて頂きましたが、どうやらとうとう最終目的地、オリエント・アロマ・アカデミーに到着してしまったようです。皆さんとの(ミンテには一体、わたし以外の誰が見えているのだろうか)出会いや楽しい思い出は、本当にかけがえのない宝物です。このツアーを通して、日常ではとても味わえない体験が、いっぱいできたことと思います。もうすでに疲れて、ヘトヘトになってしまっている方も、いるのではないでしょうか? 
 うふふ、これが最後のツアーとなります。もうひとふんばり、がんばりましょう」


(ミンテ劇場上演中のマナーは、まず座席に深く腰を掛け、私語は慎むように。盗撮もNoよ。もし電車や他の人のいる前で鑑賞するのなら、あまり笑わないように。ウザイと思う分にはいいけど、顔に出して笑っていたら、恥をかいてしまうわ)


「まずは向こうに、あ、奥の方、こちらでーす、ついて来てくださーい(この花ときたら、本当に楽しそうだ)。花崗岩でできた白いビルが見えると思いますが、あれがアカデミーの本館になります。
 ここからだとちょっと分かりにくいかもしれませんが、建物の上に、一回りずつ小さい建物を、どんどん積み重ねて造られております。全部で6つの層に分かれているんですね~。アカデミートリビアですが、それぞれの層は、屋上のピラミッドと合わせて、7つのチャクラを表現しているんですよ。凝ってますねー。
 建設年代は、約8500年前、アトランティス崩壊後の地球大混乱時代となります。ひとつ前の人間の文明が浄化されたせいで、ここ、植物界も、かなりの影響というか、痛手を受けてしまったわけですが、そういう時期に、かのデルタフォースの一角――『真の薫香』によって創立されました。
 『真の薫香』といえば、アロマ連合のグランド・マスターとしても有名ですが、アカデミーの学長も兼ねております。
 第一層から三層まではアカデミーですが、四層から上は、アロマ連合本部、それに『日の昇る評議会』などがあるので、生徒、学生は基本立ち入り禁止となっております。
 内部の詳細につきましてはー……たぶん、一階の事務でパンフレットかなんか配ってると思うので、そちらをご覧ください。
 では、質問などはございますか?」
「はい!」わたしは元気よく手を挙げる(城門の石像が、門が閉じられないから早くして欲しいと嘆いている横で)。
「あんなに大きな建物があったら、来るときに気付くと思うんですが、なんでなんでしょう?」
「ラヴァーレさん、それはとても良いご質問ですねえ」ガイドさんは楽しそうににんまり笑うと、「後ろをご覧くださーい」と言うので、わたしは後ろを振り返った。
 すると、あまりの光景に目を疑った。

 ――嘘!? さっきまで、あれ!?

 都市を歩いていたはずなのに、なくなってる。
 まるまるなくなって、市場も、人間も、建物も全部消えて、ただ砂漠が広がり、アカデミーへと続くまっすぐな道、そして道のわきには、人間の顔をした犬の気味の悪い像が、対をなしてたくさん並んでいるだけだ。
「どういうこと?」
 わたしは、ちょっと目まいがしてしまった。それとも、わたしがおかしくなってしまったのだろうか?
「ここはもう、人間界ではなく植物界なんですよ。だから、都市と重なっているようにできていますが、世界が違うので干渉、ぶつかることはまずありません。
 戦争や災害などで人間界に負のエネルギーが満ちれば、こちらにも多少の影響はありますが、そうならないように係りのヒトや私たちがいて、頑張っているんですね。
 この星には、泉や湾の中、山の中なんかにそれぞれの世界があって、植物界の他にもいろんな世界が存在します。今の時期旅行するなら、まずは竜宮城ですかねーあ、MTB(ミント交通公社)を100年以内にご利用のお客様は、割引できますよ」
 負のエネルギーとか、世界が違うとか言われてもピンと来ないけど、なんとなくはわかった。これ以上聞いてもきっとわからないと思うし、あまり聞きすぎるのもよくないんだろうなー(物語的にも)。
 それにさっきからずっと門がガタガタいってるし、石像が真っ赤な顔をしている(本当に赤い……)。だというのに、この花の楽しそうなことといったら……さりげなく宣伝するところまで、抜け目のない。
「はい、アンケート取りまーす。今回のツアーで何かご不満な点はございますか?」
 わたしは気の利いたジョークをおみまいしてあげることにした。「そうね、とてもステキなツアーだったけど、ただ……」
「ただ……?」息を呑む音が聞こえる。なんでそんな一生懸命なのだろうか。
「ポップコーンでもあれば、最高だったわ」
 その言葉に、ミンテとわたしは大笑いしたのだった。

 その後、「いい加減にしろ」と石像がマジギレして立ち上がったので、急いで逃げたのは言うまでもない。

*:..。o? *:..。o? *:..。o? *:..。o? *:..。o?

 オリエント・アロマ・アカデミーの敷地内に入ったミンテとわたしは、衛兵さんに挨拶をしてラクダを預けると、本館へとまっすぐに続く石床の道を歩いていた。
 それにしても、すごい広さだ。ここで一人前の精霊になるためにみんな、勉強しているのか。そう思うとわたしは、不安で仕方がなかった。
 上手く……やれるのだろうか。
 わたしたちが歩いている道の両側では、動きやすそうな同じ服を着た花たちがそれぞれ、離れたところで修行しているのが見える。
 走ったり、棒で球を打ったり、投げたり、蹴ったり……。とても修行しているとは思えないような笑顔で、過酷な鍛錬に励んでいる。
 精神レベルが高いんだわ。――キラキラと、朝日を浴びたみたいにみんな輝いて、立派な精霊になるために努力している……。
 オマケに、おしゃべりしながらこちらにやってくる、二人の女子の着ているおそろいの服。とてもオシャレだ。確か、ガラベーヤとかいう、今こっちで流行っている服だ。旅の途中で立ち寄った洋服屋さんで、ミンテが教えてくれたから覚えている。
 筒形のゆったりしたワンピースで、女子二人のガラベーヤは、星がよく見えそうな深い夜空の青色をしている。金色の、ラインと小さな総角結びの連なりが、袖口からみぞおちまで続いて刺繍されており、きらびやかで華やかだ。
 それに比べてわたしは! っ。ひどく惨めで恥ずかしい。
 わたしが今着ているのは、ふんわりと揺れるAラインの白いシフォンブラウスで、肩先から袖口にかけてがざっくり開いていて、肌が少し見えるのがイタズラっぽくて気に入っている。腕の真ん中あたりと袖には黒いリボンがついていて、服の縁も黒く彩られているため、下の黒いパンツとヒールサンダルと相まって、かなり引き締まって大人っぽく見えるが、シフォンブラウス自体がゆったりとしているので、大人の余裕っぷりも感じられるようになっている。のに!
 なんだか可愛くない。
 かつて世界を股にかけた(らしい)MTBのガイドさん曰く、素晴らしくキュートでクールなそうだが、もちろんわたしもそれは信用しているわ。ミンテのセンスは抜群に良いもの。だけど……
 着ている花が悪かったら、どんな服も、ただの布きれじゃないのかな?
 だって、ミンテの服装は、いつものジーンズに白いシャツっていう質素なものだけれど、とても洗練されていてカッコイイ。それは、やっぱり花が良いから――ミンテ本人がステキだからじゃ……
 ミンテの言うとおりだった。こんなにオシャレな服を着こなして、自信に満ちあふれている花たちがいる中で、〈ドコドコさん〉の服なんか着られない! 
 やはりミンテは正しかったのだ。どうしよう、わたし! 恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「危ない!」
 男の花のたくましい大声が聞こえたので、なんとなく顔を左に向けたら、白い何かが目の前にあった。

――え?

 驚く間も瞬きする間もないわたしの顔に、とてつもなく速い球がニンゲンみたいに襲いかかってきたのだ。
 だが、わたしの顔にそれが埋め込まれることはなかった。ぶつかるギリギリ、寸前のところで突然、石床を突き破って生えてきた大きなつる草が球をキャッチしたからだ。

 ――は、はっ

 後から遅れて恐怖が、風に乗っかってやって来た。髪がさっとそよぐのがわかる。
 わたし、 、 、わたし!? 
 胸が心臓の激しい鼓動で上下し、ワッと汗が噴き出た。
「あらあらあらあら~、燃やされたい子たちがいるみたいね」ゾクッと背筋を震わす声が聞こえた。
 そうだ、ニンゲンよりも、もっと恐ろしい花がいるんだった。わたしは恐る恐る、お姉さんを見上げる。
 ひっ。
 額に青筋を浮かべながら、さらさらと笑っている。一番キゲンが悪い時だ。
 わたしに当たらなかった球は、どうやらもっと恐ろしいものにヒットしてしまったらしい。お姉さんの堪忍袋の緒を、引きちぎってしまったのだ。
「あ、あの、わたし、平気です、ほら、何もなかった、ば、ばんざい\(^o^)/」
 わたしの声などもはや聞こえないというように、ミンテはピンク色のリボンを付けた使いのつる草から球を受け取ると、ありがとうとキスをして、地面の中に引っ込ませた。ああ、もうなるようにしかならないのね。わたしは神に祈りを捧げることにする。見たことなんてないけど。
「『征服の草』の名において命ず――持ち主の元に返りなさい」
 詠唱をすると、ミンテはポーズを決めて、大きく振りかぶった。
 ヤバい、マジだ! 詠唱まで唱えてしまった!
「バーニンッ!!」

 力のある精霊が投げた球は、星の地軸をずらすほどの天体みたいなスピードで持ち主の男子学生へと飛んでいった。
 ラヴァーレが最後に見た学生の顔は、洪水みたいに涙であふれていた。
 ボンッという、明らかに何かが陥没したような音が響きわたり、空へと跳ね上がる球――卒倒する男子。その様子を、そこら中にいる大勢の花たちが見ていた。似たような格好の花たちが、修行をやめ、場の空気が一気に張り詰めたものに変わる。

 ……ちょっ、ちょっとちょっとちょっと!?

 マズいよ、大事態だ。心臓が、わたしの胸を往復ビンタしてきて辛い。こんな事態になるんだったら、素直にぶつかっていたほうが、まだ良かったかもしれない。
 そこら中から年上の花たちの、部外者を見る目が、わたしたちに突き刺さっていた。

 ――まだ入学してすらいないのに、こんな大問題を起こすことになるなんて、思わなかった

 遠路はるばる、この日を楽しみにして何度眠りについたことか。わたしの青春は、早くも終わってしまった。アカデミーに入学することも叶わず、ステキな王子様と出会うこともない。
 いや、それで済めばまだ良いほうだ。
 この後、仲間の仇討ちに大勢の花たちが、飛びかかって来るかもしれない。
 床に散らばったビーズのように散在している大勢の男の花たちの、手にしている球。たとえば、あれを一斉に投げてこられたら?
 ……ひとたまりもないだろう。嫌な覚悟をしてギュッと拳を握りしめたその時、ひとりの男の花が声をあげた。
「おいあれ、『征服の草』じゃね?」、と。その言葉を皮切りに、ワァと歓声が聞こえてくる。
「やべー、ホンモノだ!」
「うお~、俺ファンなんだよ!」
「初めて見たけど、写真より美人じゃね?」
「サインくれるかな!?」
「征服されて~ッ」
「弟子募集中かな!?」
「一緒にいる子は誰だ?」
 な。なんなのだこれは!? 飛んできたのは球ではなく、称賛、歓声の雨だった。

 ――っていうか、どういうこと!? あと、倒れたお兄さん、放置されててかわいそう……

 わたしの視線に気付かずミンテは、さっきの渾身の球を投げた時にずれた草冠を直すと、大声を出した。
「お前らァ! 参道付近で投げてんじゃない! 危ないでしょーが! 次やったら全員〝オーストラリア送り〟だからな!!」 
「「「押忍」」」と口々に頷くゴツい花たちを見て、ミンテは戻ってよし、と手で合図を送る。
 そこで、ようやくわたしは「あの花、大丈夫なの?」と口にした。ミンテは肩をすくめる。
「精霊なんだから、あれぐらい平気よ」その言葉にわたしはホッとすることにした。疑っても、怖いだけだもん。
「もし、人間だったら?」
「もちろん死んでる」
 ! っ。  まあ、死人は出なかったんだから(と思う、恐らく)、前向きに考えなきゃ。……そうだ、前向きに考えなきゃダメだ! わたしは一体何を弱気になっていたんだろう。服がなんだ、自分の容姿がなんだっていうんだよ、怖気づいて、逃げ腰になって、くだらない! わたしはラヴァーレ、立派な精霊になるんだ! そうだ、わたしは最強だ。クマだって倒せる! すごいんだ! 
 ……あ、でも、今回の旅で気付いたけど、普通の女の子はクマなんか倒さない、わ……。
 わたし、これでいいのかな? いや、もうこれでいい。わたしは他の女の子とはちがう! でも、やっぱり変? なるべく同じでいたいかも。uuuuum なんかもう頭痛い。
 悩んでも仕方ないし、ありのままのわたしで行こう。うん。もしそれでぶつかったなら、自称偉大で最強らしいわたしのお姉さんみたいに、自分らしくして、とにかく楽しんで、笑っていられればいいや。

 ――植物だもん。笑っていれば、きっといいこともあるはず

 悩みと迷いを振り切ったわたしの耳元に、風が言葉を運んできたような気がした。
 え? ミンテ、今なんか言った?
 そう聞いたけどミンテは「ううん、なにも」と言うだけだった。
 代わりというようにわたしの頭に手を置くと、「ケガはない?」と心配してくれた。
「うん。あの、守ってくれて、ありがとう!」
 はにかみながら後ろで両手を組み、えへへと笑うわたしに、ミンテも笑顔で答えてくれた。ミンテの地中海みたいな優しいブルーの瞳が、透き通るような爽やかで甘い香りが、わたしの心をリラックスさせてくれる。
 ミンテがわたしの髪をわしゃわしゃとなでてくれて、なんだか恥ずかしかったけれど、心地がすごい良かった。しあわせだ。しあわせダ!
 体がなんだか温かくて、ずっとこうしていたかったけど、でもやっぱり恥ずかしかったから、わたしはミンテの手を振りほどいて本館のほうへ少し駆けると、ふわりと回って弾みながら、後ろで両手を組み、上目遣いでお姉さんを見た。
「ねえ、わたしのすてきなガイドさん。もっとこのアカデミーのこと、詳しく教えて」
 ミンテは珍しくきょとんとした。お、これはなかなかにレアなお顔だ。焼きつけなければ。
「あらあら珍しい、乗ってくるなんて。これは雹でも降ってくるんじゃないかしら? うふふ。いいわ、でも、暴走しても知らないわよ?」
「いいよ。どうせ乗るなら、暴走列車のほうが楽しいわ(あ、セリフ間違えた。この時代は暴れ馬だったわ、いっけね!)」
 そこで一息入れると、わたしは、自分に言い聞かせるように言い切った。
「どうせ行くなら、ガンガン行かなきゃ」

 迷っていたって仕方ないもん。