読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第6輪 マノン・ガトフォセ4

棒を持って歩くラベンダー

 

――ガトフォセ家のリビング――

 

「はい、これをぬっておけばひとまず大丈夫」

マノンはピエールの赤くなった腕に、ラベンダーやサンダルウッドから

調合した薬をぬってあげていた。

 

「イィッヅァ」

「がまんして」

 

[うーん人助け! 愛ね]

 

「これで少しは腕のキズもよくなると思う」

「お母さんになんて言い訳したらいいと思う?」

 

[頑固なジャガイモ野郎共(ドイツ人)に、

ちーとばかし英才教育をほどこしてやったぜ。

!? これはカッコイイ!]

 

「プッフ――え~とそうね。
階段から転げ落ちたとかでいいんじゃないかしら」

「それでごまかせるかな?」

「それで納得すると思う」

「でも、ちょっとマヌケすぎない?」

「じゃあもう言い訳なんてしないで、正直にイジめられたって言えばいいじゃん」

「それは恥ずかしいんだよ」

 

[恥ずかしい・・・? 自分の顔と体を鏡で見たことがないのかしら?]

 

「くっ……」

マノンはのどもとまでこみ上げた笑いをおさえると共に、

おさななじみのこの体たらくっぷりにあきれていた。

 

「でも本当にありがとうマノン、
きみはぼくの天使さまだよ」

 

[この時はまさか、自分がピエールの妻になるなんて

マノンは思ってもいなかった]

 

「気持ち悪いこと言わないで!」

「へ!?」

「あーごめん、こっちの話――ちょっと待ってて」

 

マノンが急に奥の部屋へ走っていったので、ピエールはきょとんとしてしまった。


「いまの言葉……そんなに気持ち悪かったかな」

 

*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ


マノンの部屋。

 

「ちょっと! 横でうるさいよ」

「マノンも笑ってたでしょ?」

「あ、あれは、すごい、おもしろかったけど」

「でしょ? あのキズだらけの腕!
ポテト野郎からエグザゴーヌ(フランス)を守ってやったぜって言えば
お母さんもお小遣いをくれるよ」

「ふッ――いや、ゲンコツしか、なら、いっぱいくれると思う」

「イジメから助けてキズの手当てまでしてあげるなんて、マノンはやさしい子だねえ」

「ラベンダー、だれかといる時に笑わせるのやめて」

「いまマイブームなの。ナレーションつけるのおもしろくない?」

「おもしろいけど困るの!」マノンはほおをふくらました。 

 

(正確にいうと、紀元前の頃からずっとやっていたから
もはやナレーションの神として祀られてもいい境地 by ローズマリー)

 

マノンとなかよく話しているのは、
あわい紫色の髪の少女だ。

 

年はマノンと同じ14歳ぐらい。

ローマ帝国風の白いワンピースを着ており、
左手首にはミントを思わせる天然石のブレスレットをしている。

 

(なに? ローマ帝国を知らない? なんのアニメだって!? 

まったく最近のガキンチョは……。

かつて世界で一番だった強国も、時代の流れには逆らえないのね by ラベンダー)

 

お花畑にいるようなフローラルな香りをふわりと空間に響かせながら、

ラベンダーは言った。

「マノンは、どうしてそんなに優しいの?」

「え?」

 

いきなりそんなことを聞かれるとは思っていなかったのでマノンは困った。

 

「べつに、ふつうだよ」

「ふつう?」

「困っている子がいたから、助けただけだよ」

「でも、それをできるってすごくない?」


「……」

 

「……」


「すごいかはわからないけど、ただ、体が勝手に動いちゃって」


「……」


「ああ、またやっちゃったなってあとになって思って。
後悔するんだけど、ほっとけなくて」


「……」


「どうすれば世界中の人が幸せになるんだろうって考えると、

行動するしかないんだと思う」

「それがまちがいだったらどうするの?」

「どうゆうこと?」

「自分がやってきたことが、まちがいだって気づいた時。
今までとちがう生き方のほうが正解だったと気づいたとき、どうするの?」

 

「うーん……。でも、ラベンダーが大好きなローマ帝国も、

まちがったりしたんでしょ? 

ローマ帝国でさえまちがうんだから、もうしょうがないと思うの。

そのときは、学校の先生かラベンダーに答えを教えてもらうよ」

 

「……」

 

「何点……ですか?」

 

「32点」

「えー、なんで?」

「フフ、地球はそんなに甘くないわ」

「えぇ~」

「ジャマして悪かったわ。さ、早くピエールのところに行ってあげて」

 

すずしげな顔のラベンダーにうながされたマノンは、

ピエールのいるリビングへと戻ったがその途中、奇妙なものを見つけた。

 

「あれは何……?」

「女好きの愚かな魂の末路よ。救う?」

「さすがにわたしも、あれは――ムリかなぁ」