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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

第9輪 プレジデント〈ドコドコ〉

我はお前たちが〈ドコドコさん〉と呼ぶ存在だ

 

                ――???

 

 優しく笑う大統領の写真

 

楕円形の執務室にはズッシリと積まれた本とパソコンが置かれた

横長のデスクがあり、ひとりの男が座っていた。

 

男は白いシャツにネクタイを締めていた。

しかし、洗いたての清々しいシャツとは反対に、男の顔は真っ黒だった。

唯一真っ黒ではない箇所といえば、目の色だけだ。

ぼんやりと黄色い光を放っている。

 

 男は口を開く。

 

「君には失望したよ、バウムクーヘン州知事」

「ま、待ってください、プレジデント〈ドコドコ〉!」

「私の部下に使えないものはいらないんだ」

 

そう言うとプレジデント〈ドコドコ〉は引き出しの中にあるスイッチを押した。

途端に床に穴が開く。

 

「ぅアっアアアァァァァァァァァァ!!?」

 

バウムクーヘン州知事は穴の中へ消えた。

「おまたせ子猫ちゃん。使えない部下を持つと苦労するよ」

プレジデント〈ドコドコ〉は自分のヒザの上に女を乗せて、胸を触りだした。

 

*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ

 

「アッハッハッハッハ! 怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

怖ええよ! なんだよバウムクーヘン州知事って!?」

 

 オレは今、週刊ドコドコを読んでいた。

このクソ漫画、毎週毎週1話限りの話を数ページ、作者である

ラベンダーが書いてくれるのだが今回の〈ドコドコさん〉はどうやら大統領らしい。

 

それにしてもなんだよバウムクーヘン州知事って! 

名前のネーミングからもうすでにツボだ。

人が死なない回はなく、たとえどんな状況であろうと最終的には

〈ドコドコさん〉が恐怖と理不尽、暴力の象徴として笑うクソ漫画。

 

仕事が忙しい時は2週間ほど休むのだが、

ほぼ週刊で書かれている素晴らしいクソ漫画。

 

(一応初めて読んだ読者のために説明しておく。

〈ドコドコさん〉というのは1番人気が高いOBAKEのことで、

台形や六角形など、いろいろなタイプがある。

ちなみにオレは〈トオルヨくん〉派 by オレンジ)

 

この週刊ドコドコ、面白いことは面白いのだが、ひとつ難点がある。

ラベンダーが個人的に書いているものだから、ラベンダーの部屋に

忍びこまないと読めないということ。

 

さてと、用は済んだ。とっととこの部屋からズラかろう。

オレは自分の香りを残さないよう意識して部屋から出ようとした。

そして出口へと視線を向ける途中、床から天井まである大きな絵画が目に入った。

 

黒いスーツの男性が雪道を走っている絵だ。

うーん、ラベンダーの私物にしてはイマイチなセンスだな。

 

(オレがそう思ったのは本当だ。ラベンダーはセンスだけはやたらいい。

正直、想い出の品でもなけりゃこんな意味のわからない絵は置いておく価値もない。

せっかくだからオレが新しい絵を書いてやろうと思ったが、部屋に入ったことが

バレるのでやめておく)

 

それにしても、この絵ってこんな絵だったっけ?

雪道を男が走っている絵ではなかったような……。

いや、興味はないのであまり見たことはないから、

やはりオレの気のせいかもしれない。

 

 そしてオレが去ろうとした瞬間、額縁の中の絵が動いた。

 

!?

 

なんだ?

雪道を走る男がどんどん動いてこっちへやって来ているように見える!

姿がさっきよりも大きくなっている。

オレは霊視してみた。すると、どうやらこれはポータルになっているようだ。

 

なるほど。これはラベンダーの仕事道具だったのか。

ラベンダーに用があるやつはこのポータルを通って会いにくるらしい。

道理で、ラベンダーにしてはセンスのない絵を飾っているなと思ったら。

それにしても絵のポータルとはオシャレだな。

 

(ポータルというのはそうだな……ドアだと思えばいい。

ある空間からある空間へ移動できるドア、それがポータル。

高質なものになればなるほど繋がる空間も増えるし、

より遠くへ行けたりもできる。精霊の世界にもUFOの発着場は一応あるが、

近い空間へ行くならポータルのほうが便利だ。部屋に設置できるし、

絵にしておけば限られた精霊だけで使えるしな)

 

こうしておけば、もしマノンやガトフォセが部屋に入ってきても

まちがって使うことはないだろう。 

ま、入ろうとしても人間には肉体があるから入れないが。

 

オレは感心した。

この絵のポータルはどういう作りになっているんだ?

おそらくアロマ連合から支給されたものだろうから、そこそこレベルの高い

ポータルにちがいない。

 

ポータルを使ってラベンダーの部屋へ来ようとしているやつを察知して、

絵として知らせてくれるのか。

どんな仕組みで察知しているのか、ちょっと気になるな。

たとえばだが、オレがどこかのポータルの前でラベンダーに会いに行こうと

強く念じれば、オレも絵になったりするのかな。

このポータルのアドレスを知っていればの話だが……

 

しかし絵の中のこいつは、どうして雪道を必死に走って

ラベンダーに会いに来ようとしているんだ? マヌケな絵面だ。

 

こいつはいったい何者なんだ?

 

オレは絵をにらんでいた。これがポータルであることをすっかり忘れて。

 

次の瞬間――

 

「うわッ!!? ダッがぁは!!」絵から出てきた男がオレとぶつかり

盛大に転んだ。

「ぐっふウッダ!!」オレはいきなり絵から飛び出してきた大人の男に

跳ね飛ばされてしまった。

 

顔が胸にぶつかって視界を奪われたあと、あろうことかヤツは

腹から胸にかけて蹴りを入れてきたのだ! 信じられるか!?

 

人間だってドアを開けるときは、前に人間がいるかもしれないから

そっと開けるだろ?

それがコイツは、ポータルからいきなり出てきやがった!

まったく、マナーというものを知らないらしい。

 

オレさまが怒鳴ろうとした時――

 

「助けてくれ、ラベンダー、サンタ界が大変なんだ!」