のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

タバコとパンプキンとシュガー

倒壊したビルの瓦礫が文明の終わりを告げているようだった。

 

かろうじて建っているビルもあったが、

窓ガラスはほとんど割れて、クシャクシャになったペットボトルのように歪んでいた。

 

もはやゴミ捨て場と間違われてもおかしくない都市では、未だに至るところから大勢のヒトの気配を感じた。

 

やったぜ!

 

俺はちょっとだけ嬉しく思った。

生き残っているニンゲンじゃなく、霊の気配だからだ。

 

自分が死んだことにも気づかず亡霊として苦しみながら、これからさまようのだ。

 

へへ、ざまぁみろってんだ。

 

因果応報だぜ。

 

・・・って、

喜んでいる場合でもねーよな。

 

シナモンは動かせない首をそのままに、目線だけを上に向ける。

 

空は夕焼け色に染まっているのでロマンチックだと思いたがったが、そうはとても思えなかった。その理由は。

 

鉛のように重たいくもり空をカボチャ型の爆弾がおおい尽くしていたからだ。

 

ローブを着たカボチャ頭の花がしゃべった。

「クク、やったぞ! あのシナモンを枯らす時が来るなんて、夢みたいだ」

 

「ぁあ、感慨深いな。こんな時が来るなんてな。クハッハッハ! 最期に何か言い残すことはないか? シナモン?」

 

煙草を吸いながら笑っているタバコに普段ならキレているところだが、もうそんな体力もない。どうでもいい。

 

「フフ。タバコさん、あなたも悪い花だ。シナモンさんはもうしゃべることができないのに」

 

シュガーの言うとおり、シナモンはもうしゃべることもできないし、動くこともできなかった。

 

なぜなら、首から全身にかけて体を鉄骨が貫いていたからだ。

 

タバコが口を開く。

「じゃあな、シナモン。これからは俺が人類を救ってやるから安心しな。まー、地球にとっては迷惑かもしれんがなぁ。ヒヒッ」

 

タバコはどこか悲しく、しかしとても楽しそうにそう言うとエネルギーを体にため始めた。

 

パンプキンとタバコとシュガーがトドメを刺そうと、全身全霊のエネルギーを込めて猛スピードで近づいてくる。

 

なくなりつつある意識の中で

シナモンは思った。

 

あーあ、こんなことだったら俺もタバコみてーに、もっとニンゲンさまに

こびておくんだったぜ。

 

 ホンット嫌になっちまう。

ニンゲンに関わると

ロクなことになんねーや。

 

おぞましくカラフルな光を放ちながら近づいてくるパンプキン。

 

相変わらず臭い悪臭をまき散らす

タバコ。

 

ウットリするほど甘い香りのシュガー。

 

目と鼻の先まで近づいてきた3輪を見ながらシナモンは思う。

 

とうとう、不死鳥のシナモンの伝説も終わりか。

 

あーあ、次に生まれ変わったら何になってんだろーな。

 

もう長いこと聖霊として生きてきたが、ニンゲンだけには絶対生まれたくないね。

 

そこでふと、ある人間の言葉が

頭によみがえる。

 

ーーおら、気合いだせ! 人間よりもすごいんだろ!

 

はは、まったく言ってくれるぜ、人間の分際で。はっはっは。

 

もう疲れた。

オリバナム、あとは頼むよ。

 

ひどい大轟音が鳴り響いた。