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のほほんほわほわ

植物擬人化小説『ラベンダーさん』が読めます

休日のミルラさん UFOに試乗しました! 

ワンシーン小説(長い文章が苦手で雰囲気だけ楽しみたい方はこちら)

UFOに乗ってハワイへ行くミルラさん

 

ミルラさんは、エジプトのはるか上空から地中海をながめていた。

ふかふかの座席に腰かけて、あまりのやわらかさに心の中で飛び跳ねていた。

 

ふふ、この乗り心地、うふふ。地球にはない物質だな。

なんだろう? すっごいやわらかいのにすっごい丈夫だ。

今こうやって念力で引きちぎろうとしているのに、ちょっと伸びただけだ。

もっとも本気でやればすぐちぎれるだろうが、そんなことをすれば

周りに怒られてしまうし、座席も壊れてしまう。

 

オリエント・アロマ・アカデミーにはUFOを開発する部活がある。

UFO FOR YOU部だ。

私たちは何もしていないが学生たちが自分たちで

宇宙連合から技術スタッフを呼んで、UFOを自作している。

 

いま私が試乗しているのはアレクサンドロスXXⅦ(27)。

アレクサンドロスⅠの頃を知っている身から言わせてもらえば、

素晴らしい乗り心地だ。

ただ個人的には、うーん、ズルカルナインのダイダロスがやはり最高だな。

UFO自体の振動数と艦内の空間の造りが良い。

植物の精霊と周りの自然環境にも優しい造りなのにスピードもそれなりだし、

それにワープの酔いもない。どういうこっちゃ。

ステルス航行時でも通常航行時とほとんど変わらない性能を出せるし、

相当な努力の賜物だろうな。あ、でもステルス航行時は確か……

何かしら欠点があったような。ま、大したことはない。

乗り物なんてしょせん、快適な乗り心地とスピードがあればそれでいいからな。

 

(ステルス航行というのはUFOの姿を周りの精霊や宇宙人から視認できなくすること。

ただ、人間はステルス航行時でなくともUFOの姿を見ることはできない。

次元がちがうからな。精霊を視える人になら、UFOも視えるだろう。

もちろん普通の人間にもUFOの姿を見せることはできる。

ダイレクト航行という機能だ。上の次元にあるUFOを三次元に物質化する機能で、

これを使えば人間にもUFOの姿が見えるようになる。

だが負担がデカい。UFOが物質化するということは、中にいる私たちも

物質化してしまうということだ。ダイレクト航行のレベルにもよるが、

少なからず霊体が三次元の物質に近くなってしまう。

物質化に慣れていない者にとっては苦痛だろう by ミルラ)

 

UFO FOR YOU部。素晴らしく才能あふれる若きクリエイターたちよ。

その行動力、少しだけ勉強にも使ってくれないかなぁ。

 

「乗り心地はどうですか? ミルラ先生」

横を向くとUFO FOR YOU部の部長が立っていた。

「ああ、快適だよ。特にこのイスは素晴らしく気持ちがいい。疲れが取れそうだ」

「本当ですか!?」部長は嬉しそうだ。

「ハワイで用事を済ませたら、すぐ戻るから待っていてくれ」

「そういえば、用事ってなんですか?」

「ちょっと……連合のな」

包帯のシワが黒い影を作ったのを見て、聞いてはいけないことを聞いてしまったと

部長は口をつぐむ。

「も、もう少しで着きますので、お待ちください!」

そう言うと展望室から出て行ってしまった。

 

ミルラは再び外の風景を見たが、その光景に目を見開く。

「な、なんだこれは!?」

オレンジ色の空が広がっていた。しかし、夕陽の色ではない。

今は昼を少し過ぎたぐらいだ。では、このオレンジ色の空はいったいなんなのか。

ミルラは目を凝らしてみた。煙?

オレンジ色の薄い煙が辺り一帯にただよい、空を汚れたオレンジ色に

染め上げていたのだ。

 

ミルラは下を見て、言葉を失う。

下は赤黒い塊の霧がドーム状に渦巻いており、何も見ることがない。

だが、ミルラはこの場所が! この国が! 何の国だか見当がついていた。

 

ミルラの頭にいつかの『日の昇る評議会』でのできごとが思い起こされる。

 

東洋風の黒い衣装を纏ったスキンヘッドの男性が見えた。

「我々は、この国から撤退する」

 

昔はこの国の空を、龍がたくさん飛び回っていたのに……

 

精霊に見放された国。

 

大気を汚す国。

 

地球の敵。

 

終わったな、中国。

ミルラは目をつむる。そして開けると、小さな龍のような形の国が目に入った。

 

「あ。日本じゃん! アマちゃん元気かな。忙しいだろうなー。

いつか一緒にパンケーキ食べたいな」

 

ミルラさんは、やはり疲れているのか、ひとりごとを言っていた。

 

エジプトから空の旅を楽しみながらゆっくり移動して20分。

とうとうミルラさんは、ハワイへとやってきました。